米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰
Japan In-depth / 2017年4月10日 7時45分
また、今回空爆をされたシュアイラート軍用基地もイランと共に使用してきたとされるどころか、昼間には借り受けたサイトに軍事アドバイザーを常駐させていたとすら言われている。ロシアはメンツを丸つぶしされたことに怒りを隠せないようだが、これにとどまらず、主導権を握ってきたシリアをめぐる国際社会の動きやシリア内政における米国の巻き返しに抵抗していくに違いない。
本日の米露外相電話会談では露側から強い抗議が行われ、シリア国内の衝突回避(de-conflict)措置も一方的に凍結されたとのことであるが、来週に予定されているティラーソン米国務長官の訪露は極めて厳しいものとなりそうである。
なお、木村北大名誉教授は常々、米新政権発足時には露に歩み寄るが、国際紛争が発生して両国関係が厳しくなるのが過去4代の米政権のたどった道のりであると述べておられるが、トランプ政権にとっても大きな試練となることであろう。
(5)前述の通り、今回の空爆には国際社会、就中、北朝鮮に対する「一線を越えたら、行動する」というメッセージが含まれている。このようなメッセージを携えた行動を見せつけたからこそ、米中首脳会談の前半部では、米側が主導権を握り、中国に行動を促すことができているのであろう。北朝鮮は反発を見せているようだが、言葉とは反対に、政府・軍首脳の心中には穏やかならざるものがあるはずだ。
(6)しかしながら、今回の空爆が直ちに東アジア情勢を解決に導き、あるいは米主導で動かすことを約束するものにはならず、注視が必要である。今回の空爆は、前述の通り、シリア情勢を動かす上で重要だが不十分で決定的なものにならなかった。同様に、中国に対しても、北朝鮮に対しても、ショックを与えるには十分であろうが、それが将来における中国の北朝鮮に対する根本的な姿勢の変化や、北朝鮮による行動パターンの変更をもたらすと断ずるのはあまりに早い気がする。
特に、かりに米国がシリアに対して深入りすることになれば、二正面はできなくなると北朝鮮が考える可能性が出てくる。逆にシリアに対する攻撃がこれで終了すれば、シリアにおける米国の立場は失われ、計画なき空爆に対する内外の批判にトランプ政権がさらされる可能性もある。ショックを用いる手法で米中首脳会談において主導権をとるやり方も一つではあるだろうが、いかにも近視眼的で、大国としては珍しい博打のような手法に見えてならない。
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