タイ自動車産業が構造不況に 日系メーカー苦境
Japan In-depth / 2017年7月30日 22時30分
(出所: 2017年6月 筆者撮影)
タイ国内での小型乗用車の平均価格は約150-200万円。これに対し、1台当たり30-50万円程度の補助金を出したのである。これを受けてタイの国内自動車販売台数は大幅に増加、それまで年間70-80万台水準であった新車販売台数は、2012年・2013年に140-150万台まで急上昇した。但しこの補助金には制限がついており、“5年間は車を買い替えてはいけない”、というものであった。
反対からいえば、2012年に5年足せば2017年、つまり、2017年からは、“First car buyer”たちの車の買い替え需要が出始めるのではないか、との期待感につながる訳である。
2012-2013年のバブル期以後、タイは政治が混乱、2011年には軍によるクーデターで軍事政権が誕生、ストや暴動が相次ぎ景気もまた低迷した。自動車販売は2014年以降、バブル前の年間80万台水準に逆戻り、つまりピークであった140-150万台に比べ、ほぼ半減の水準にまで落ち込み、それが昨年・今年と依然として続いているのである。
5 景気は好調なのに車が売れないわけ
これに輪を掛けたのが元国王の死去とその後の消費自粛と言われる。ただ筆者が現地で感じた肌感覚では、タイの景気はしっかりとしている。特にバンコク市内を中心に景気は上向きであり、高層マンションの建設ラッシュが続く。失業率は2%台と非常に低く、工事現場は海外からの出稼ぎ労働者で溢れかえる。(写真2)
写真2: 新しい高層アパート・ホテルが建つバンコク市内
(出所: 2017年6月 筆者撮影)
筆者はバンコク市内のデパートや日本食レストランにも足を運んだが、昼・夕食時ともなればどこも満席、300バーツ以上はする日系のラーメン(1,000円+)を求め、地元住人で長蛇の列が出来ている。デパートも人で溢れ帰り、決して消費を自粛している印象はない。ただ、車のような誰にでもわかる大物の購入には、元国王の葬儀(今年10月)までは、自粛する意識もまだあるようだ。
話を自動車に戻すが、タイの自動車販売は今年初めからプラス基調が続いた。2017年から代替需要が出始めると信じていた向きには朗報であった。ところが実際はその伸び率が月を追って縮小、5月には0.6%増まで減速した。(図2)
図2: タイ新車販売推移 (前年同月比)
(出所: マークラインズ)
これは何を意味するかと言えば、ちょうど1年前の状況に遡る。つまり2016年1月から、排ガスの一定基準に達していない車に対して物品税が増税となったのである。その結果、2015年11・12月に駆け込み需要が発生、反動で2016年1月-4月に販売が大幅に落ち込んだ。この落ち込みの時期と、今年の1-4月を比較すると、販売は大きく回復しているように見えているだけで、実際の販売台数は横ばい状況だというのが現地販社の声である。またその横ばいというのが、バナナの叩き売りをしてようやく横ばいに見える、というのである。
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