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タイ自動車産業が構造不況に 日系メーカー苦境

Japan In-depth / 2017年7月30日 22時30分

政府による補助金支給から5年、代替需要が中々出てこない、何故だ、という関係者もいるが、これも少し考えてみれば当たり前とも言える。2012年・13年に政府からの補助金によって車を初めて購入できた人たちというのは、なかなか懐具合が厳しい人たちである。

200万円の車というが、タイの1人当たりの平均所得は60万円ほど。共稼ぎが多いため、世帯収入は100万円-150万円程度になるが、政府から30万円もらって200万円の車を買うというのは、実質、年間世帯所得以上の買い物をするということで、当然ローンを組むケースが圧倒的となる。

最も多いのが5-6年ローンで金利10%。それでもがんばって車を初めて買ったのだが、その後、月々の支払いに困る世帯が続々と出てきた。結局、ローン途中で支払いを投げ出し、不良債権となった車も数多いと聞く。その支払いが滞った車は、ローン会社や銀行が差し押さえ、これを彼らはオークションで売りさばく。すると中古車価格が大幅に下落するという構造。

5年経って車の代替ができるようになったからと言って、すぐに代替できる世帯はまだまだ少ないのが現状なのである。平均的世帯はやはり10年近くその車に乗り続けるのであって、これは日本でも同じなのである。

6 日系各社工場稼働率70%以下で赤字転落?

さてタイ国内での日本車の市場シェアは95%ほど。圧倒的大多数が日本車である。ただ輸入関税が高いため、殆どの車はタイの現地生産である。また前述した通り、タイはピックアップトラックの市場規模が大きいこともあり、輸出用のピックアップトラックを中心とした生産拠点ともなっている。日系自動車企業の大半がタイに工場を持つこととなり、トヨタ・いすゞ・ホンダ・三菱自・日産・マツダ・スズキ・日野などが、各社の主力級の工場を操業している。

2012年に政府による補助金が出て国内販売が急増、輸出も堅調に推移し、結果としてその生産規模がタイ全体で250万台に達した時、日系各社はタイ工場の能力増強に、一斉に踏み切ったのである。

その結果、タイ国内に於ける生産能力は年間300万台に達し、原則、この数値は今に引き継がれている。2012-2013年次のように、生産台数が250万台もあれば、工場稼働率は全社平均で約83%となり、利益は十分に確保されるが、今年予想される190万台の生産規模では、その工場稼働率は約63%となる。

各工場間でその生産効率や生産車種に違いがあり、一概には言えないものの、業界としての損益分岐点となる工場稼働率は、最低でも70-75%であろう。63%の工場稼働率では、ほぼ全社が赤字転落すると言っても過言ではない。

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