独裁者マルコスの再来か ドゥテルテ比大統領
Japan In-depth / 2017年10月11日 12時55分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・比のドゥテルテ大統領が現在、一部地域に布告している戒厳令を、全土拡大を検討中。
・比ではマルコス元大統領時代の歴史的背景から、戒厳令に対して強い警戒感がある。
・しかし「戒厳令の全土拡大で共産勢力の一掃」という思いが大統領には生まれていると考えられている。
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フィリピンのドゥテルテ大統領が、南部ミンダナオ島周辺に限定して年末の12月31日まで布告している戒厳令について、フィリピン全土に拡大することを検討していることが明らかになった。
ロレンサナ国防長官は「(全土への拡大の)可能性は低い」と否定的な見方を示しているものの、マルコス元大統領時代の戒厳令下での過剰な人権侵害事案を知る世代を中心に、警戒感があらわになっている。
▲写真 ロレンサナ比国防長官 出典:Department of Defense(Philippines)
折しもマルコス元大統領が戒厳令を布告した45年前の9月21日に合わせて、マニラ市内では大規模な「反独裁・反専制政治」の集会を予定。ドゥテルテ大統領は混乱を回避するため、21日を休日とすることを検討するなど、緊張感が高まっている。
ドゥテルテ大統領は9月9日、最近各地で国軍や警察と衝突、交戦が頻発しているフィリピン共産党の軍事部門「新人民軍(以下、NPA)」の動きに関連して「NPAがルソン島などの都市部でこれ以上騒乱を起こすような事態になれば、戒厳令の全土への拡大もありうる」と警告した。
これを受けて15日にロレンサナ国防長官は「共産勢力の脅威が高まった場合には」との前提条件付きで、「戒厳令の全国拡大を大統領が検討している」ことを事実として認めた。しかしその一方で、NPAの現在の勢力は全国規模で騒乱を起こすほどの力も国民の支持もないとの見方を示して、「戒厳令の拡大の可能性はわずかだろう」と、戒厳令拡大に強い反対を示す野党勢力や人権団体などの懸念を払拭した。
■ 戒厳令を巡る政治的駆け引き
ドゥテルテ大統領は、南部ミンダナオ島南ラナオ州マラウィ市でイスラム系武装組織などが武装ほう起、国軍と戦闘状態になったことを受けて、5月23日にミンダナオ島周辺に限定した戒厳令を布告した。その後、中東のイスラムテロ組織「イスラム国(IS)」のメンバーなどが加勢し、一般市民を「人間の盾」にしていることなどから鎮圧作戦に予想以上に手間取り、7月22日に年末までの戒厳令延長を決めている。
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