コマツの新型“8輪装甲車”差戻し
Japan In-depth / 2018年7月31日 23時6分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・防衛省、陸上自衛隊の装輪装甲車(改)の開発事業中止を発表。
・外国製に比べ約3倍以上高価な国産装甲車を調達する余裕は無くなるだろう。
・防衛省、自衛隊は責任の所在と開発の意思決定システムのどこに問題があったか明らかにすべき。
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防衛省は7月27日、陸上自衛隊の次期8装輪装甲車、「装輪装甲車(改)」の開発事業の中止を発表した。開発を受注した小松製作所(以下コマツ)が、同省の求める耐弾性能を満たす車両を作れなかったためとされている。
同省は、試作品の対価として支払った約20億円の返還を同社に求める。開発中止は既に一部で報じられ、筆者も独自のルートでその事実は確認していた。だが実際の開発頓挫の理由はこの「大本営発表」の通りではないようだ。
防衛装備庁は陸自の国際平和貢献活動、島嶼防衛に対する対処などに対応するためとして、96式8輪装甲車の後継の8輪装輪装甲車、「装輪装甲車(改)」の開発を進めてきた。名称から誤解されそうだが96式装甲車の改良型ではなく、新規開発である。
試作はコマツとMHIの競合でコマツが獲得し、昨年2月に5両を納めた。だが多大な問題があり、昨年中試作は不都合を直すためにコマツの工場に送り返された。この件は防衛省装備庁も昨年12月26日に公式に認めたが、あくまで装甲の不備としているが問題は深刻で、外国に候補が無いから国産を決定したのに、昨年夏ぐらいから水面下で外国製の代案の調達も考慮されてきた。
「装輪装甲車(改)」は狙撃、地雷、IEDなどに対して96式よりもより高い抗たん性が求められ、任務に応じてモジュラー式装甲、耐地雷構造、RWSなどを装備することが求められている。APC(Armoured Personnel Carrier:装甲兵員輸送車)、指揮通信車、地雷原などを処理する戦闘支援車輌(工兵車輌)の3種類の調達が予定されている。
調達台数は未定である。プロジェクトは総額48億円である。試作は2014年から2016年まで行われ、技術・実用試験が2016年から2018年までとなっていた。
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