コマツの新型“8輪装甲車”差戻し
Japan In-depth / 2018年7月31日 23時6分
96式もこの法律に従って横幅が2.45mとされたが、コマツの設計者は「狭い横幅によって、設計に大きな制限があった。これが2.6mだったら遙かに優れた装甲車が開発できた」と述べている。この法律には規制に対して「在日米軍車輌はその限りではない」と明記している。だが、自衛隊の文字はない。不思議な話だ。自国の「軍隊」よりも「同盟軍」が優遇されている。だがこの法律には例外規定があり、国交省に届ければより大きな車幅の装甲車も問題なく運用できる。
この例外規定を利用する前提で、NBC偵察車よりも後に開発が始まった機動戦闘車は2.98mとされた。これは横幅が2.5m以下では105ミリ砲射撃の反動を吸収できないと三菱重工が強硬に主張し、それに陸幕が折れる形で実現した。だが、コマツ案は リスクをコスト低減のためにNBC偵察をベースとしたので、この2.5メートルの横幅となった。コマツがNBC偵察車を流用して開発したのは要求が既存車輌をベースにした改良であり、開発予算が19.7億円と少なかったからだろう。
防衛装備庁は昨年12月26日のプレスリリースにおいて、「装輪装甲車(改)」の不具合を認め、2019年度まで不具合の改修を行い、2019年度から試験を再開し、21年度までに開発を完了するとしている。つまり開発は3年間遅れることになる。装備庁は不具合を「耐弾性能のばらつきの多い装甲板の使用や板厚不足があったため」としているが、それを鵜呑みにはできない。
同リリースでは「該当不具合の改修等の必用な対応を試作品の受注企業である(株)小松製作所において行うと共に、量産化に向けて幅広い選択肢の中から最適な装備品の調達が可能となるよう代替案分析をおこなうこととなりました」とある。
だが、装備庁は本年1月15日に新型装甲車に関する情報提供を呼びかけた。情報提供企業として以下の条件を挙げている。
ア 装輪装甲車に関する研究、開発、製造等の実績を有する企業
イ 装輪装甲車の開発又は製造等に関する知識及び技術を有することを証明できる企業
ウ 日本国内において装輪装甲車の輸入・販売に関する権利を保有する企業又は権利を獲得できる企業
つまり、外国製も含めた代替車輌の採用を考慮していることを匂わせている。この時点でコマツ案を諦めていた可能性が高い。
だがATLA高官は本年初頭の筆者の取材に対して「装甲以外の問題は解決している。耐地雷・IED防御には問題がない。様々な可能性を調査するのは、コマツが問題を解決する間、我々には多くの時間があるからそれを有効に使うためだ」と説明している。
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