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コマツの新型“8輪装甲車”差戻し

Japan In-depth / 2018年7月31日 23時6分

装備庁の説明の通り、装甲だけが問題ならば外国を含めての代用車種採用のための検討を行うことは無いはずだ。別の業界ソースは「モジュラーシステムの機能不全が起こっている。それは装備庁がそもそもファミリー化を前提とした提案書を募集していなかった」と述べている。


既に大手商社は昨年半ばからその方向で動き始めている。候補は恐らく米陸軍のストライカーやイベコのAV、ネクセターのVBCI、パトリアのAMVなどが候補に挙がろう。ボクサーは重すぎて日本の運用環境に適合しないだろう。


しかしながらもっとも有力な候補はMHI案だろう。MAV は機動戦闘車の派生型であり、整備や教育、兵站をかなり共用化できるメリットがあり、また両車輌の生産性が向上して調達単価や維持整備コストも低減可能である。外国製の車輌は比較検討のためと、MHI案を選択することを正当化するためのプロセスを実施したという「アリバイ工作」のための当て馬である可能性もある。


陸自は創設期を除き、装甲車両の国産化を進めて、AAV7を除けば殆どの装甲車両を国内開発、国内生産してきた。またコンペをやり直した場合MHIが唯一の候補となれば競争入札が成立しない。2007年の山田洋行と守屋次官のスキャンダル以降防衛省の調達では原則、随意契約は行われず競争入札となっている。



▲写真 8輪装甲車(改) 提供:防衛装備庁


だが外国製が導入される可能性も否定はできない。既にAAV7A1を52輌輸入した実績があり、またPKOや邦人救出のためにタレスのブッシュマスターAPCを調達している。装甲車輸入に関する心理的なハードルは若干下がったと考えられる。導入したその場合製導入の場合、コストの面からライセンス国産ではなく輸入される可能性がある。


陸自の予算は逼迫している。陸自はMV-22オスプレイ、AAV7を54輌など、高額な調達、維持費を必用とする装備を導入した。今後、ベルのUH-412ベースの次期汎用ヘリの調達が始まり、次期戦闘ヘリAH―X なども控えている。更にはイージスアショアも陸自の担当とういうことで話が進んでおり、外国製に比べて約3倍以上高価な国産装甲車を調達する余裕は無くなる可能性がある。


もしコマツがこの契約を取れない場合、同社の特機部門にとっては大きな打撃となる。コマツの防衛部門の売り上げは約300億円、その三分の二が榴弾や戦車砲弾などが弾薬であり、装甲車の売り上げは100億円に過ぎない。現在の防衛大綱では5年ほど前は600輌/門あった火砲、装甲車が300輌/門に減らされる。つまり砲弾ビジネスは約半分に落ち込む。更に新型8輪装甲車の契約を逃がすと、コマツの防衛部門の存続が危うくなる。


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