陸自のAH-Xを分析する その1
Japan In-depth / 2018年11月30日 9時30分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・多難な次期戦闘ヘリコプターの選定。
・UH-Xの調達単価は12億円→20億円超の可能性もあり。
・偵察ヘリの更新はさらに深刻かつ喫緊の問題。
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陸上自衛隊は戦闘ヘリAH-64D及び攻撃ヘリAH-1S(米軍のAH-1Fに相当)の後継としては次期戦闘ヘリコプター(AH-X)の選定を本年度から進める予定だ。だが陸自のヘリ部隊は多くの問題を抱えており、AH-Xは大きな困難に直面するだろう。
陸自はAH-64Dを62機導入する予定だったが、13機で調達が停止された(本年2月事故で1機喪失)。このためAH-1Sの更新は完了しなかった。しかもAH-64Dのメーカーサポートは2025年で終了する。だが2019年頃から部品の枯渇が始まる。このため陸自の機体は射撃が不可能になるなどの障害が出る可能性が高い。部隊としての戦闘力は更に低下するどころか、2025年を待たずに、全く稼働できない事態すら推測される。
本来AH-64Dで更新されるはずのAH-1Sは90機が調達されたが、現在残っているのは59機程度で、しかも航空科関係者によると飛行可能な機体は45機程度で、作戦可能な機体はそのうち2/3程度であるという。しかも、AH-1Sは近代化もされておらず、能力的にも問題がある。CH-47輸送ヘリよりも遅く、エスコートもできない。
写真)AH-1S
出典)著者撮影
防衛装備庁は5月以降にメーカーや商社にRfI(情報要求)の提出を求めた。現時点では要求仕様などは明らかになっていないが、攻撃ヘリだけではなく汎用ヘリに武装を施した武装ヘリも候補とされていることから安価な武装ヘリの選択も予想される。現在の所、対戦車ミサイル、ヘルファイアの発射が求められているぐらいで、要求は固まっていないようだ。AH-Xが同程度の機数を調達することは予算上現実的では無く、30~50機程度になると予想されている。
業界関係者の話を纏めると国内メーカーでは三菱重工(MHI)が既に配備されているUH-60Jの武装型、川崎重工(KHI)が偵察ヘリ、OH-1の武装型、スバルが次期多用途ヘリ、UH-X(ベル社のB412EPIベース)の武装型を提案する模様だ。また外国メーカーはベルが攻撃ヘリAH-1Z、ボーイングがAH-64E、レオナルドがA249を提案する模様だ。陸幕は陸自航空隊のヘリの機種を減らす方針であり、AH-1ZやA249が候補として残るのは難しいだろう。
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