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変わる市民の役割~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~1

Japan In-depth / 2019年2月19日 19時14分

「心臓を止めるな!」と聞くと「心停止」なのだから、心臓が既に止まっているように思う人が多いであろうが、心臓のポンプ機能が停止した直後は、心臓は通常の血液を送り出す大きな動きである「拍動」ではなく、けいれんしているような「細動」の状態であることが多い。東京マラソンでは2018年までに11例の心停止が発生したが、そのうち10例が「細動」の状態であった。



▲図 制作:照井資規2018 無断転載を禁じる


細動状態であっても心臓そのものは動いているので電気ショックによる「除細動」によって救命できる可能性は高い。細動の最も効果的な治療は電気的除細動のみであるから、早期のAEDの適用は救命において極めて重要である。心停止から時間が経過してしまうと心臓の細胞から酸素とエネルギーが失われ、心臓を制御する脳細胞も死滅し始め心臓が完全に停止する「心静止」の状態に陥る。


救急隊が到着する頃には心停止発生から10分ほどが経過してしまっているため、心臓の「細動」すら止まり、手遅れであることが多い。東京マラソンでは11例の全例が救命され社会復帰している。1例のみ最初から心臓が停止している「心静止」状態であったのが、こちらも社会復帰できていることから、迅速な救命手当こそが救命の鍵であり、平成30年度東京消防庁救急標語 「そばにいる あなたが 最初の救急隊」とはよくこのことを表現している。


死んでしまった人を再び生き返らせることはほとんど不可能である。心臓のポンプ機能のみが停止している状態から完全に心臓の動きが止まってしまう前に救命の手を差し伸べる、AEDが近くに無い場合は心臓マッサージと人工呼吸によって、救命可能な時間を引き延ばすことが重要だ。


心臓マッサージは力が要ることも覚えておくべきだ。筋肉の塊である心臓がけいれんしている「細動」の状態にある時、その心臓を体の外から押しつぶして、脳への血流を維持するために最低限必要な血圧100mmHg以上を保つためには、最大で50kgの力で押す必要がある。圧迫回数は1分間に100回、ベンチプレスで100kgを挙げられる体力のある男性でも始めてから2分と経過すれば有効な圧迫力を加えられなくなる。


心臓マッサージは脳へ血液を送り出して、心臓へと戻すことが目的である。それだけの力と速さ、そして胸の厚みが元に戻るまでの除圧も重要だ。そのため、「心肺蘇生」から「心肺脳蘇生」と名称が変わり脳への血流維持が強調されるようになった。


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