変わる市民の役割~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~1
Japan In-depth / 2019年2月19日 19時14分
「ハートフォード」とはコネチカット州の州都の名前である。2012年12月14日アメリカのコネチカット州ニュータウンのサンディフック小学校で発生した銃乱射事件を契機に、2013年4月、悪意による大量殺人事件や銃の乱射事件から生き残り、最大多数の最大救命を実現するための国家政策を立案するため、アメリカ外科医学会(ACS;American College of Surgeons)によって合同委員会が招集された。
この委員会はアメリカ連邦政府、国家安全保障理事会、アメリカ軍、FBI(アメリカ連邦捜査局)、公立および私立の救急医療機関などの代表者によって構成され、現在では銃乱射事件に限らず災害全般まで含めた、アメリカ国土強靭化のための国家政策の議定書を作成している。その勧告はThe Hartford Consensusと呼ばれ、2018年現在までに4つの勧告通達書が発表されている。
災害やテロなどで一度に大量の負傷者が発生しているような状況に対処するため、警察や救急隊などが特に調整や相談をしなくても、一斉にそれぞれの機能を発揮できるように、国家としてまたは国際的な「事前の取り決め」が必要になった。Consensusとは意見の一致や合意の意味で「こうした方がいい」という感じで、軍隊の命令に近いSOP: Standard Operational Procedure「作戦実施規定」と比べてそれぞれの自主裁量の余地が大きい。
The Hartford Consensusで最もよく知られるものが、2013年6月1日発 第一勧告「銃乱射事件における生存方法の改善提案」で提唱されたTHREAT:アクロニムだ。これは事件現場を、
Hot Zone 絶対的危険環境 さし迫った危険がある
Warm Zone 中間的状況
Cold Zone 相対的安全環境 さし迫った危険はないが完全に安全ではない
の3つに区分し、それぞれで行うべき方針を定めたものだ。
▲図 制作:一般社団法人TACMEDA 無断転載を禁じる
2015年7月1日発「大出血制御の具体的方策」として示されたハートフォードコンセンサス第3勧告書では、銃創・爆傷・刃物による致命傷などの「大出血制御の具体的方策」が示された。意図的な悪意による大量殺人事件に対する公衆の回復力を強化することは、アメリカの国策の優先事項として特定されていることを踏まえ、13年間続いたテロとのグローバル戦争での6,800人以上ものアメリカ軍の戦死者から得た教訓を民間の救急医療にも反映させることを決め、First Responder(救命責任者/日本で言う一定頻度者)をレベル分けして、先述の表のとおり、それぞれの役割を定めた。
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