新種オランウータン生息地に中国ダム建設
Japan In-depth / 2019年3月15日 23時0分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・オランウータン生息地でのダム建設中止求める訴えが却下される。
・ダム建設計画は中国企業との合弁事業で中国の金融機関が融資。
・中国企業が関係したインフラ整備や大規模事業で様々な問題。
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インドネシアのスマトラ島北スマトラ州で中国企業などが建設を計画している水力ダム発電計画の建設中止求めていた環境保護団体などの訴えを地元メダンの州裁判所が却下したことが大きなニュースとなっている。というのもダム建設予定地近くにはオランウータンの生息地があり、建設に伴う開発がオランウータンのエコシステムを破壊する可能性が指摘されているからである。
人間に最も近いとされる類人猿のオランウータンはインドネシアのスマトラ島とカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)、マレーシア領にだけ生息する絶滅危惧種であり、これまで「スマトラ・オランウータン」と「ボルネオ・オランウータン」の2種が確認、保護の対象とされてきた。
ところが2017年11月、スイス、英国、インドネシアの学者などからなる国際調査チームが北スマトラ州タパヌリ地方で生息が確認されたオランウータンが、DNA(遺伝子)や頭蓋骨の骨格や歯などからこれまでの2種のいずれにも属さない新種のオランウータンであることを米科学誌「カレント・バイオロジー」に発表して、国際的なニュースとなった。
オランウータンの新種発見は実に88年ぶりで、発見された地域の名前から「タパヌリ・オランウータン」と名付けられた。
▲写真 88年ぶりに新種として発見されたタパヌリ・オランウータン 出典:Tim Laman (Wikimedia Commons)
この新種のオランウータンはタパヌリ地方だけに生息し、その個体数は約800と推定され、早急な保護とさらなる生態観察が発見直後から大きな課題となっていた。
■ 生息地付近で中国との合弁でダム建設
ところが同州南タパヌリ県で中国企業との合弁事業で中国の金融機関が資金援助する水力発電ダム「バタントルダム」の建設計画が明らかになり、インドネシアの自然保護団体「ワルヒ」を中心に、ダム建設の反対運動が始まり、建設計画の中止を求める請求が裁判所に提出され、審理が続いていた。
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