人質報道はこれでいいのか?
Japan In-depth / 2019年4月12日 18時3分
Japan In-depth編集部(小寺直子)
【まとめ】
・シリアで拘束されていた安田純平氏が講演。
・身代金のやりとりを改めて否定。新たな事実関係など具体的な根拠と分析の内容説明。
・虚偽の報道が日本人を危険にさらすことになる。
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4月9日、ジャーナリストの安田純平氏が東京大学で講演会を行った。安田氏は昨年10月、内戦下のシリアで、40カ月に渡る拘束から解放されて帰国した。帰国後の会見は記憶に新しいだろう。安田氏の解放を受けて、日本では「自己責任論」による批判が起こった。虚偽や真偽不明な情報の報道、専門知識や経験、人権への配慮を欠いたタレント達のワイドショーでの放言、それをタブロイド紙やネットメディアが拡散した。今回の講演では、記者会見の時点では分からなかった新たな事実関係を踏まえ、身代金が支払われていない具体的な根拠と分析の内容、日本の虚偽報道がもたらす危険と社会へのメッセージを語った。
◼️紛争地を取材する理由
安田氏は一橋大学を卒業後、長野県の地方紙信濃毎日新聞で記者として勤務していた。しかし、「新聞社にいて記者をしていても、戦争の実感がなかった」という。それほど、今の日本人にとっては戦争は遠い存在だ。安田氏は記者時代に休暇を取ってアフガニスタンやイラクの取材をはじめ、その後フリーランスに転身した。冒頭でその理由を、「戦争によって何がどう変わっていくのか。それは、変わる前と後を見なければ分かり得ないことだ。戦争が始まる前に現地にいかなければ、戦争の悲惨さは分からない。『なぜ、前線にいく必要があるのか。』という批判もあった。それは、難民が発生するのは前線だからだ。前線には逃げられない大勢の人がいる。まだそこに、人がいるのであれば、なぜそこに人がいるのか、それを見にいく必要がある。ジャーナリストとしてそれを世の中に伝えるべきだと思っている。世界のことと身の回りのことをどう関連づけていくのか、自分の生き方を考えるうえでも現場を見た方がいいと思った。」と語った安田氏からは、強い使命感と信念が伝わった。
「戦争前は夜でも子供が遊ぶくらい治安がよかった。しかし、道路やビルを作ることをしていた日本企業の社員の一人が、飼い犬の名前をフセインにして捕まった、とか、現地の人は、サダムフセインについて家族の中で話しても、子供がそれを外で話して捕まってしまうという話はあった。家庭内でもそれなりの緊張感があった。」と振り返る。
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