人質報道はこれでいいのか?
Japan In-depth / 2019年4月12日 18時3分
そして、海外と比較して「デンマーク人で拘束された人がいた時、3億円がデンマークに要求されていた。国としては応じなかった。しかし危機管理の専門家たちが、寄付で200万ユーロ(3億円)を集めた。公表すれば殺すと脅されていたため、寄付をした人も、メディアも皆が公表することはなかったのだ。日本だったらこんなことは無理だろう。
また、海外の場合は解放の時は、PTSDが発症しないように、心理学者など専門家集団をつける。感情の高ぶっている家族といきなり会うと衝撃が強いため、いきなり会わせることはせず、手紙から見せよう、どの手紙から見せるべきかとか、最初に会う部屋はどんな環境が良いのか、メディアにはいつどのように出るべきか。などとても慎重に行う。私にはそういった配慮は一切なかった。もし仮に、私が数億円払われて解放されたとするならば、政府は精神科医や専門家をつける、メディアを制限するなど最低限のケアはしてくれるはずだ。残念ながら、日本メディアの現状は、外務省もわかっていない。情報の真偽、メディア検証も全くしてくれないので、全部自分でやるしかない。」
◼️ 自己責任と家族は別物
「2004年や解放後は家族へのバッシングもひどかった。家族も連帯責任だと言われ、妻や親を引き合いに出し『自己責任』を言いながら、『連帯責任』を求められた。しかし、『自己責任』と言いながら、家族を引き合いに出し、親を責めるのは、批判とは言えない。妻が1時間謝罪をし続けた時があった。1時間のなかで一瞬だけ、感情が高ぶり机を叩いた時があったが、メディアに使われたのはその瞬間の映像だけだった。」
「『自己責任』を主張する人の趣旨は、政府が認めていないことをやるな、ということ。しかし、記者の仕事は、政府がやっていることが正しいかどうかを、国民が判断する材料を提供すること。政府が認めたことだけをやっているのは、皆さんに『奴隷になれ』と言っているのと一緒。(事件に対応した)外務省の人は、もちろんそんなことは考えていない。捕まっていた時も外務省と家族とコンタクトはとっていた。妻が仕事で海外に行った時は大使館を紹介してくれたり、面倒見てもらっていた。担当者レベルですが、家族のケアをよくしてくれたと思う。感謝している。」
▲ ©Japan In-depth編集部
◼️自分が好きなことを突き詰められる社会であるべき
「捕まっている間はとにかく過去のことを振り返っていた。『どうしてこうなったんだろう』『違う仕事でもよかったかもれない』『今までの選択肢は正しかったのか』『大学時代にもっと勉強しておけば』その後悔が小学生の時の記憶まで遡った。しかし、やり直せる未来がない状態で過去を後悔し続けるというのは、精神的に本当に辛かった。もっと挑戦したかった仕事、お礼を伝えていない人、もっとできることがあったはずなのに、と走馬灯を見ながら、悔やみながら死んでいくと思った。もし生きて帰ったら、無理だと思って諦めたことがないように、死ぬときにマシな走馬灯を見られるように生きよう、と思った。」
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