人質報道はこれでいいのか?
Japan In-depth / 2019年4月12日 18時3分
2016年1月初めに、拘束中の安田氏の元に妻からの別の質問が届いていた。これは仲介役を売り込んでいた、日本政府とは無関係のスウェーデン人が介在していた。しかし、安田氏の回答が妻の手元に届いたのは、2年8ヶ月後の2018年8月だった。しかも、外務省はテレビを通じてこれを見た。
「この時間差の生存確認でわかることは、私が2年8か月前までは生きていた、ということ。解放後に外務省の職員は、最初にしたことが、私の本人確認の質問だ。私が目の前にいるのに。そこまでする政府が、本人の生存確認もできていない状況で、身代金を払うわけはない。そんな外交交渉はありえない。」
その仲介役が介在した時の質問は、「自宅の椅子はどこで買ったものか」「よく買う焼酎の銘柄は」「家族をなんと呼んでいるか」といった内容だった。
「焼酎はたくさん買いすぎて、銘柄がすぐには浮かばなかったので、まず妻の出身地である鹿児島の焼酎”Asahi”と書いた。後にこれが朝日新聞だとか言われることになるのだが(笑)現地の人にとっては、日本語というだけでマイナー言語で解読がされにくいことを利用して、妻にわかるように焼酎の銘柄に見せかけて暗号も書いた。
”Harachaakan”(はらっちゃあかん=身代金を払ってはいけない)、”Danko6446(断固無視しろ)”、”BujiFrog”(ブジフロッグ=無事帰る)
書いている時は、まるで家族と会話をしているようで、本当に嬉しかった。反面、暗号がバレてしまうのではないかという恐怖も凄まじく脂汗を滲ませながら書いた。」とその瞬間を振り返った。
▲写真 拘束中の安田氏の元に届いた妻からの質問状 出典 講演会中の安田氏の資料をJapan In-depth編集部が撮影
◼️支払いがあったという嘘の報道
「 ”身代金が支払われた”、という情報が飛び交った根拠は、ロンドンに拠点のあるNGOのシリア人権団体のコメントだけだ。『カタール経由で身代金を払った、安田氏は4日前に解放されていたが、政治的な経緯で公表されなかった。』
と全くの根拠のない嘘が発表された。そのNGOの発表だけで、日本の大手メディアが事実の裏どりもせずに書きたてた。」そのNGOは、過去にも日本のメディアのインタビューに対して全くの虚偽を答えたり、他のサイトに掲載されていた事実に反する情報をコピペしたりしていたという。
「メディアがいちNGOの情報だけで書いたらまずいだろ、と思いますが、それよりも特オチ(特ダネを他社に先に書かれてしまうこと)の方がまずいから、こぞって書いてしまった。明らかなデマが入っているのに、タレントや交際政治学者が『身代金が支払われてテロリストに金が渡り、他の人が危険になる』とテレビで発言を続け、それが流された。」
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