人質報道はこれでいいのか?
Japan In-depth / 2019年4月12日 18時3分
◼️紛争地での取材
2012年7月に安田氏がシリア内戦の最前線で取材した映像を紹介した。政府側による空爆の直後で、崩壊した家の瓦礫の中から人を救出し、野戦病院に運び込む場面では、死亡している子供達の生々しい映像が映し出された。
「ここまでの映像は日本のメディアでは流せない。建物が崩壊すると上からの瓦礫のせいで頭が割れている遺体が多い。向こうは子だくさんの家が多く、1軒やられると子供が大勢犠牲になるので子供の遺体も多かった。兵器というのは本当に残酷に設計されている。爆発した後の破片が刺さることで人が傷つくようにできている。強力な威力で一人を確実に殺すよりも、破片で1人に重傷を負わせれば、その負傷者を庇ったり助け出すのに二人は必要になる、そうすれば三人の兵力を失わせることができるからだ。防弾チョッキを着ていても破片が直撃したらどうしようもない。空爆があったら、とにかく腹を地面から少し浮かせて伏せろ、と教えてもらった。それは破片だけでも避けるため、そして振動で内臓がやられないように腹を浮かせて伏せる。あそこで子供が元気に育つのは奇跡に近い。子供が元気に育てない環境は、社会が壊れていることを象徴している。」
◼️身代金は支払われていない
安田氏が解放される際に、身代金が支払われた、という情報が日本国内で飛び交った。真偽不明な情報を鵜飲みにして、「テロリストに加担した」「プロ人質」などという誹謗中傷がなされた。しかし、政府は身代金の支払いを否定しており、それに疑問を挟むような事実はなんら明らかになっていない。今回の講演で、安田氏は、「身代金の支払いはなかった」という政府の主張を補強する事実を明らかにした。仮に身代金を支払うとすれば、本人の生存確認が最も重要な前提である。そうでないと、無関係の人やテロリストの集団に金をだまし取られることになるからだ。そうした確認のために、仲介役を通じて本人しか答えられない質問を伝え、本人の回答を待って生存確認をすることになる。
「ところが、外務省が私しか答えられない質問を初めてしたのは、私が解放されてかだ。」という。解放されてから最初に、安田氏本人であることを確認するための質問が行われた。外務省の職員は「子供の頃飼っていたペットの名前はなんですか?」「結婚パーティーをしたのはどこで、結婚の承認は誰ですか」と安田氏に質問した。それで、ようやく、安田純平氏だという身元が確認された。
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