嘲笑された日本の小切手外交 集団的自衛権の禁止とは 2
Japan In-depth / 2019年7月3日 10時34分
他方、自国自身だけを守る権利は個別的自衛権となる。個別と集団の自衛権を人間の防衛にたとえるならば、個別的自衛権の発動が自分だけを守る権利の行使となる。集団的自衛権は愛する者を守るための戦い、あるいは正義のため、平和のための戦いをするそれぞれの権利だともいえよう。
▲写真 41カ国が部隊を派遣している国連レバノン暫定隊(UNIFIL)。日本は参加していない。 出典:United Nations Peacekeeping facebook
全世界でもわが日本だけは集団的自衛権は保持はしているが、行使はできないという立場をとる。その理由は憲法9条の規定である。憲法9条は他国なら自明の権利の交戦権を禁じ、戦力の保持を禁じているからだ。戦争の放棄をもうたっている。では自分の国を守るための戦いもできないのか、というと、9条の解釈はかろうじて、戦争は「国際紛争を解決する手段」としては一切禁止だが、自国の防衛のためには禁止はしていない、ということになっている。だから自衛隊が存在できるというわけだ。
集団的自衛権の行使の禁止は日本だけを考えれば、ひびきのよい「不戦の誓い」などとなるのかもしれない。だが日本の防衛を引き受けているアメリカからすれば、自己中心的な宣言として映る。国際平和活動からみても全世界で日本だけは戦闘の危険が少しでもある場合は参加はできないのだ。だから国際平和維持には貢献できない自己中心の国のあり方ということになる。
日本の集団自衛の拒否が国際的な批判の対象となってもう久しい。「自己中心」「他国の安全保障努力へのただ乗り」「外部をみない一国平和主義」といった批判だった。東西冷戦でソ連が崩壊した1990年代はじめごろからである。
もう一つはアメリカからの批判である。アメリカは日本を防衛するためには、自国民の若者たちの生命への危険を冒しても戦うことになる。だが日本はアメリカを防衛するために戦うことはない。この点こそが今回のトランプ大統領の批判だった。
この2種類の批判は骨子においては一体だが、説明をわかりやすくするために二つに分けて報告しよう。
第一の国際的な批判は1991年1月に始まった第一次湾岸戦争であらわに示された。その前年のイラクのフセイン政権のクウェート軍事占領に反対する諸国はアメリカの主導と国連の承認を得て、多国籍軍を結成し、イラク軍を攻撃した。約30ヵ国が参加し、実際に部隊を送った。各国はこぞって集団的自衛権を行使したのだ。
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