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プロフェッショナルな医師とは

Japan In-depth / 2019年8月12日 7時0分

なぜ、こんなに違うのだろうか。私は、わが国の医師の多くが勤務医で、大学の医局に所属するからだと考えている。自分が希望する病院で働くことは出来ず、病院での雇用形態は一般のサラリーマンと変わらない。経済的にも精神的にも自立していない。


読者の多くは医師の自立と言うと開業医を想像されるだろう。献身的な町医者もおられるが、開業医の世間のイメージは悪い。自民党の有力な支援団体である日本医師会があるからだろう。「開業医=金持ち」とお考えの方も多いだろう。一方、勤務医は労働条件が悪く、過労死と隣り合わせというイメージだろう。従来の医師のキャリアパスは、若い頃は勤務医として苦労し、中高年になると開業することだ。経済的には安定しているものの、どれくらいの高校生が、このモデルに魅力を感じるだろうか。灘高の教師が「医学部に行かないように指導している」というのも理解できる。


医師の働き方は、このようなステレオタイプなパターンだけではない。医師はもっと「自立」した生き方が出来るし、ニュルンベルグ裁判の教訓は、医師は国家や権力者に媚びず、患者サイドに立って生きることを求めている。21世紀のわが国で、どのような医師の在り方があり得るか、筆者自身、試行錯誤を繰り返している。我々の取り組みをご紹介したい。


私は血液内科医だ。2005年に東京大学医科学研究所に研究部門を立ち上げていただき、2016年3月まで特任教授として在籍した。思うところがあり、2016年3月に独立し、現在は70名程度の「同志」と共に働いている。


やっていることは、東大時代と変わらない。


研究・教育はNPO法人医療ガバナンス研究所、診療はナビタスクリニック(我々のグループが経営するエキナカクリニック)や福島・仙台などの病院で従事し、中国・ネパール・英国などと共同研究を進めている。


活動資金として、公的研究費や補助金に頼らず、自前の資金で研究や教育活動を進めている。生産性を上げるために、いかに効率よく働くか常に考えている。


私たちが、このような働き方ができるのは、勿論、我々が医師だからだ。私は47歳の時に独立したが、若手医師でも独立は可能と考えている。「個人事業主」として複数箇所で勤務すればいい。私が主宰するNPO法人医療ガバナンス研究所に集う若手医師たちは、新たな働き方を模索している。私の仕事は彼らを応援することだ。彼らの現状をご紹介しよう。


「南相馬と広島・上海で働かないか」坪倉正治医師が嶋田裕記医師に提案した。坪倉医師は2006年に東京大学医学部を卒業した内科医だ。2011年3月の東日本大震災以降、福島県浜通りで診療・研究活動を続けている。2016年4月、福島県立医科大学の特任教授を兼任し、多くの大学院生を指導している。嶋田医師は、その中の一人だ。


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