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プロフェッショナルな医師とは

Japan In-depth / 2019年8月12日 7時0分

現在、ときわ会常磐病院での乳がん診療をメインに、大町病院でも非常勤医師として診療している。また、週末は東京にもどり、私どもの研究所で研究する。その一環として、ワセダクロニクルと医療ガバナンス研究所の共同プロジェクトである製薬マネーデータベースの立ち上げを主導した。ワセダクロニクルのコラムニストも務める。


臨床研究にも熱心で、2014年に南相馬市立総合病院に移籍して以降、84報の英文論文を発表し、ネパールや英エジンバラ大学との共同研究のリーダーを務める。診療の傍、帝京大学公衆衛生大学院にも通い、博士号を取得した。坪倉医師同様に東大医学部卒業後に医局に属することなく、自らキャリアを切り拓いてきた。


山本佳奈医師の働き方は坪倉、尾崎医師とは少し違う。2015年に滋賀医科大学を卒業後、南相馬市立総合病院で初期研修を修了した。その後、大町病院、ときわ会常磐病院の勤務を経て、2018年10月からはナビタスクリニック新宿に拠点を移した。


彼女の目標は「女性を総合的に診療できる医師」になることだ。特に関心があるのは貧血、性感染症、子宮頸がん、ピル問題、女性医師差別問題だ。30代の女性が多く受診するナビタスクリニック新宿が格好の修業の場だが、現在もときわ会をはじめ、福島県内の複数の施設で勤務している。勤務が空いている日は、医師紹介サイトで申し込んで都内のクリニックでアルバイトもする。「いろんな環境で診療し、経験を積みたい」そうだ。


彼女は企業との連携にも熱心だ。永谷園と「子供と一緒にフルーツ青汁」を共同開発した。商品パッケージには山本医師の写真が掲載されている。現在はロート製薬の健康アドバイザーも務める。大勢の女性社員が働き、大量の女性顧客を抱えるロート製薬は山本医師にとって理想のパートナーだ。このような共同研究の成果を36報の英文論文として発表し、そのうち筆頭は5報だ。現在、東京大学大学院博士課程にも在籍中である。


さらに、アエラ・ドット、医療タイムス、オール・アバウトなどで連載、ラジオ大阪にレギュラー出演し、社会への発信にも熱心に取り組んでいる。


山本医師も坪倉、尾崎医師同様に自ら仕事を選ぶ。勤務した病院の勤務環境、経営者の資質に問題があれば、体制の改善を要求する前に辞職する。「どうせ言っても変わらないし、そんな暇があれば仕事をした方がいい」と言う。


もちろん、制度の改革が必要なところもある。私は尾崎医師や山本医師の進路相談に乗ってきたが、彼らが飛躍したきっかけも南相馬市立総合病院の辞職だ。公務員の兼業禁止規定は若手の活動を大きく縛る。幅広い分野で経験を積みたい彼らにとって大きな障害となった。安倍政権は兼業を推奨しているが、医療界で具体的な話が進んだ様子はない。もたもたしていると、公立病院から優秀な人材が流出する。


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