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プロフェッショナルな医師とは

Japan In-depth / 2019年8月12日 7時0分

若手医師の中には「海外との兼業」を始めた者もいる。それは森田知宏医師だ。2012年に東大医学部を卒業しており、嶋田医師の同期だ。亀田総合病院での初期研修を終え、相馬中央病院(福島県相馬市)に内科医として就職した。現在は日曜の当直から水曜までを相馬中央病院で勤務し、木曜と金曜は東京のベンチャー企業miupに取締役として働く。


miupの主たる業務はバングラデシュでの医療ビジネス、特に臨床検査ビジネスの立ち上げだ。森田医師は、毎月一週間程度、バングラデシュで勤務する。仕事柄、地元の医師と交流する。会社の業務の一環として臨床研究を進めるとともに、経済的な側面も含め、バングラデシュの若手医師を応援する。昨年は森田医師が支援し、アビデュラ・ラーマン医師が福島医大の病理学教室に留学した。このような交流の積み重ねが、有機的なネットワークの構築へ繋がる。


森田医師は診療の傍、東大医科研の大学院生となり博士号を取得した。東日本大震災以降、発表した英文論文は50報で、筆頭著者は16報だ。


坪倉、尾崎、山本、森田医師、いずれもが福島をベースに国内外で「兼業」している。浜通りは医師不足の僻地だ。若者が働きたくない地域の典型だろう。ところが、彼らはここをベースに成長した。そして、現在もこの地の医療を守り続けている。


これは私がグランドデザインを描いたわけではない。東日本大震災直後から福島で診療を続ける中で、自然に確立した働き方だ。彼らは「福島で働き続けるためにはどうすればいいか」を考えて、「複数ケ所勤務」の方法を確立していった。


福島の地域医療に従事するのは、やりがいがある仕事だが、症例数も少なく、十分な経験を積めない。幸い福島と東京は近い。我々の研究所が存在する高輪から南相馬市立総合病院に行くのに要するのは約4時間だ。毎日の通勤は無理でも、二ヶ所勤務は十分な可能な距離だ。


このような勤務を続けるうちに、彼らは「東京から南相馬に行くのも、上海に行くのも変わらない」と言い出した。


これまで私たちのグループは上海の復旦大学と共同研究を続けてきた。2017年には森田・山本医師が復旦大学に約一ヶ月間留学した。


上海はダイナミックだ。意志決定は速く、規模は大きい。さらにノウハウを有する人材を求めている。これまで、我々のグループは谷本哲也医師や加藤茂明・ときわ会常磐病院先端医学研究センター長、いわき明星大学教授(元東大分子生物学研究所教授)が中心となって、復旦大学の研究者と共同で『ランセット』のレターなども含め10報以上の学術論文を発表してきた。


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