タイ南部イスラム過激派テロ
Japan In-depth / 2019年11月15日 18時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・タイ南部、テロ頻発により夜間外出禁止令が検討されている。
・イスラム過激派のテロ活動は南部地域から首都まで拡大。
・夜間外出禁止令が逆に過激派を活発化させる可能性も。
タイ南部マレーシアとの国境地帯にあるパタニ県、ナラティワート県、ヤラー県、ソンクラーン県などイスラム教徒が多く住む地域で最近、イスラム過激派による活動が活発化しており、タイ治安部隊との衝突や一般市民を狙ったテロ事件が頻発、タイ政府は同地域一帯に夜間外出禁止令の発布を検討することを治安当局に許可したことが明らかになった。
夜間外出禁止令はもし発令された場合、12月1日から2020年の11月30日までの1年間となる見通しという。
タイは3月の選挙で2014年5月のクーデター以降続いていた軍政から一応民政移管を果たしたものの軍政を率いたプラユット首相による政権が継続、南部イスラム少数派への厳しい締め付け政策が続いており、タイ国内での最大の治安課題となっている。
▲写真 プラユット首相 出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
このため、イスラム過激派の活動を封じ込めるためにプラユット首相は夜間外出禁止令の検討を治安当局に許可したことが11月7日の官報で伝えられた。
夜間外出禁止令では午後10時から午前5時までの間、一般市民は外出を制限される。さらに一般市民による過激派関連の情報の当局への提供、イスラム過激派メンバーへの協力者に対する摘発強化などで不安定化している同地域の治安回復に全力を挙げる方針だ。
プラユット首相は検討の許可に際して「南部地域のテロを未然に防ぎ、治安状況を掌握し、そして国家の安全を確保するためである」として夜間外出禁止令の必要性を強く国民に訴えた。
■ 11月5日の事件が端緒に
タイ政府が夜間外出禁止令の導入を検討するようになった背景にはこれまでの治安不安定化に加えて、11月5日にヤラー県ヤラー市で発生したイスラム過激派によるとみられる襲撃事件があるといわれている。
事件は5日深夜に治安部隊が不審者やテロ組織メンバーを発見するために設けた2か所の検問所が武装グループの襲撃を受けて、警察官や自警団員の男性11人と住民の女性4人の計15人が殺害され、5人が負傷した。
襲撃した武装グループの約10人は自動小銃などで武装しており、深夜に検問所を急襲して銃を乱射、検問所で警戒に当たっていた人々を殺傷するとともに警察官、自警団の武器を奪取して逃走している。
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