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私のパフォーマンス理論 vol.40 - 成功体験

Japan In-depth / 2019年12月19日 11時16分

私のパフォーマンス理論 vol.40 - 成功体験


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)


 


【まとめ】


・成功体験は結果への要因分析を曖昧にさせる。


・成功体験は変化を妨げる。


・成功体験による世間の称賛は、自分を貫くことを妨げる。


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth https://japan-indepth.jp/?p=49429 のサイトでお読みください。】


 


長く競技を行うならば、どのように成功体験を克服するかが重要になる。成功体験は人を縛る。人を過去に縛り付け、固執させる。ここでいう成功体験は、幼少期に努力してうまくいって自身を得るといった体験とは違い、ある程度目標も定め競技に労力も割いた結果得られる成功体験のことを指す。私の競技人生を振り返ってみて、何か大きな落とし穴にはまってしまった時、元々の原因は成功の瞬間にあったと思わされることも多かった。


成功がもたらす害悪は三つある。成功体験とはつまり記憶であり、成功体験の対処とは記憶への対処になる。


1、原因をわからなくする


2、変われなくなる


3、世間に賞賛される味を覚える


以下、ひとつひとつ説明してみる。


1、原因をわからなくする


スポーツにおいて結果というのはあまりにも強力で、結果さえ出てしまえば全ては肯定される。それは言い換えると、いい結果が出たならば必ず勝利に貢献する何かをしていたはずだという発想に容易になってしまう。実際にはいい結果が出た時にも、間違えたこともやっているわけで、あくまで程度の問題でしかない。また原因はだいたい複雑で、何か一つが勝利の理由だったということもあまりない。負けた時は反省もしているので、この要因分析をもう少し丁寧にしつこくやるが結果が出た時には心が浮かれていて曖昧に終わらせてしまう。結果を出した人が言っているのだからそうに違いないと周囲も誰も突っ込まないので曖昧な要因分析が認められやすい。こうして、結果と関係のないものが成功の理由だったと誤学習してしまう。


また相手チームは負けたわけだから、必死にこちらを分析する。勝利したチームと敗北したチームでは分析への執着心が違う。分析の精度は疑いの強さによって変わる。勝利したチームは勝ってしまっていて疑いを持つことが難しく、結果分析の精度が悪くなる。成功体験は、この分析への執着心をパーティーの喧騒の中で濁してしまう。こうして、勝利したチームは次回以降誤学習した成功の要因を信じ込んでそこから戦略を立てるようになる。


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