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米イラン対立大戦争に至らず

Japan In-depth / 2020年1月8日 18時0分

米イラン対立大戦争に至らず


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)


 


【まとめ】


・イランの司令官殺害は世界中のメディアに衝撃を与えた。


・日本の有力メディア、事件に対する初動遅かった。


・イラン報復は代理戦争や非正規戦が中心に。大戦争にはならず。


 


今出張前の羽田空港でこの原稿を書いている。後述するように、現在米イラン関係が極度に緊張している。ラウンジのTVではイラン革命防衛隊がイラクの米軍基地に多数のミサイルを撃ち込んだとの速報が流れている。しかし、パニックする勿れ、米国とイランは今も政治戦を戦っているのだから。まずは経緯を簡単に振り返ろう。


 


新年早々、中東で大事件が起きた。正月3日に、「米軍無人機がバグダッド国際空港近くでイラン革命防衛隊『コッズ』部隊のカセム・ソレイマーニ司令官らを殺害した」と報じられたのだ。第一報はCNNだったが、その後同局ニュースはこの事件ばかり。トランプがまたヘマをやり、世界中が困っているというお得意の「ナラティブ」だ。


 


確かにこのニュース、筆者も衝撃と懸念は禁じ得ない。これをCNNがセンセーショナルに報じる理由も明快だろう。外務省で27年間中東専門だった筆者にも、あのソレイマーニを殺害することの政治的、軍事的重大さぐらいはよく判る。それにしても、日本の有力邦字紙の初動は、正月休み中だったからか、実に鈍かったと思う。



写真)カセム・ソレイマーニ司令官


出典)KHAMENEI.IR


 


最初に目にした邦字記事は「米軍、イラン革命防衛隊幹部を空爆で殺害」なる見出しの実に短いものだった。革命防衛隊「幹部」どころか、ソレイマーニはイラン革命防衛隊の中でも対外軍事作戦や破壊工作が専門の最精鋭部隊「クドゥス(アラビア語でエルサレム)」部隊の司令官だ。「コッズ」などというのは素人の英語読みである。


 


という訳で、今年の正月休みの後半はこのニュースのフォローに費やされた。もしかしたら正月明けに色々質問されるかと思ったからだ。案の定5日夜に某局から出演依頼があった。時間が合わず実現しなかったが、念のためテーマを聞いたら何と「カルロス・ゴーンの逃走劇」だった。やはり、日本での一般的関心は薄いのだ。


 


ちなみに、ソレイマーニ司令官の殺害計画は昔からあった。何度か検討されては断念された経緯があるそうだ。そりゃそうだろう、彼を殺害するのは不可能ではないが、実行後の事態収拾の難しさを考えれば、誰だって躊躇するはずだ。その躊躇をしなかったのがトランプ氏だとしたら、同氏の言動もそれなりには一貫しているのか。


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