陸自 開発実験団評価科長の尊皇攘夷
Japan In-depth / 2020年8月17日 19時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・評価科長の「国産上げ、輸入品下げ」論文に疑問。
・自衛隊の調達能力欠如を輸入品に責任転嫁。
・「滅私奉公」求める旧軍同様の精神主義で国内企業の撤退加速。
筆者は基本的に自衛官による論文や記事の発信には賛成である。自衛隊や防衛省は制服組の発信を嫌う。だが個々の自衛官が己の論を世に問うことは、組織の風通しを良くする。諸外国では多くの軍人が持論を世に問うている。
だが持論を展開することは反論や批判も当然起こる。新たな考えで議論が起こることは歓迎すべきだ。議論や批判を通して本人も成長するし、勉強になる。しかし、職務に関する事柄で専門家として著しく問題がある場合は、単に個人の意見では済まない。論を世に問う覚悟と責任も必要である。
「月刊防衛技術ジャーナル」8月号に陸上自衛隊開発実験団・田川信好評価科長(1等陸佐)の稿がそれにあたる。
田川評価科長の寄稿文は、国産装備を持ち上げて、輸入品を一方的に誹謗中傷するものである。装備は大きくわけて国産、ライセンス国産、輸入に分けられるが、それぞれ一長一短がある。だが彼は輸入装備品だけを目の敵にして批判し、国産を過剰に持ち上げている。だが、彼の批判には具体論に乏しく、憶測や思い込みが多い。また自分たち陸上自衛隊の無能を輸入品に押し付けている。
開発実験団は富士駐屯地に駐屯する陸上自衛隊教育訓練研究本部隷下の部隊で任務は、陸上装備品等の研究改善に関する調査研究、実用試験などを担当する部隊で、評価科長はその際の評価の責任者であり、公平に実験対象となる装備を評価するのが仕事である。その評価科長が思い込みやえこひいきで評価するのであれば大問題だ。以下に彼の主張を具体的に検証する。
““「海外装備品の導入の場合でも開発分担金の負担あるかもしれないし、まとめ買いでない場合、最初ディスカウントセールで次の年度から言い値に跳ね上がる場合もある」””
原因は海外装備ではなく、防衛省、装備庁、幕僚監部の調達システムにある。他国では調達するときに、数量、調達期間、予算をきめてメーカーや商社と契約する。そうでないとメーカーは事業計画が成り立たない。
だが我が国は幕僚監部が調達の見積もりはするが、国会が調達数、調達期間、総予算が議論されることなく導入が決まって、以後単年度で調達されるケースが殆どだ。例えば国会議員は現在調達されている10式戦車が何両調達されるのか、調達期間はどのくらいで、総額がいくらか全く知らない。
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