コロナ禍で再認識 インクルーシブの重要性
Japan In-depth / 2020年9月4日 20時30分
▲写真 エチオピア産の皮の魅力を伝える鮫島氏。実際に皮にペンを刺すデモンストレーションを行って、強度を試す鮫島氏。 写真提供:andu amet
■ インクルーシブイノベーション
イノベーションとは、新しい生産物の創出、新しい生産方法の導入、新しい市場の開拓、新しい資源の獲得、新しい組織の実現を指す。これにインクルーシブという言葉がつくとどのような意味を持つのか。
フーズカカオの例を紹介する。
従来のカカオ業界はトレーサビリティが取れていなかった。生産国はわかっていても、国を出る前のどの村からきたのか、トレーサビリティはなく、大量買い付け・輸出・加工・販売するというのが当たり前だった。
しかし、最近、「bean to bar」という板チョコが流行っている。カカオ豆を自分たちで調達し、輸出輸入して加工し、自分たちで販売するというものだ。福村氏は、より安価にこうした消費体験を提供できるのでは、と考えた。
「bean to barはカカオ農園に行って品質を確認・改善しているのでコストが高く、価格が市場価格の10倍とかになっている。僕らはカカオ豆の価格は守って生産コストを削ることで消費者の手に届きやすいバリューチェーンを作ることができると考えた」。
そこで福村氏は、カカオ豆から砂糖が入っていない状態まで一括で加工してしまおうと考えた。それが、2020年11月に東京で立ち上げた「カカオ加工ラボ(仮)」だ。
「原料から自分たちが開発しているというのをパティシエさんが言えるような状態にするお手伝いをしている」という。
ヘラルボニーは福祉業界で収まりがちだったアートを一般に広げる活動を行っている。いわば、知的障害がある人たちのエージェンシーだ。
今までは、障害がある人たちは福祉施設にいて、支援者が支援することによって厚生労働省からお金が入ってくるシステムだったが、松田氏はそこに疑問を持った。
「私たちは、障害者の方たちに対して支援者ではなく、ビジネスパートナーだと言っている。障害がある人たちの才能に対して企業がお金を払う新しい構造を作っている」。
その具体例が、JR東日本スタートアップ株式会社とヘラルボニーが、この7月に東京山手線の新駅、「高輪ゲートウェイ駅」の駅前特設会場で開催する、「Takanawa Gateway Fest」での取り組みだ。両社はここで、知的障害や身体障害のある人が描くアート作品で仮囲いを彩るアートミュージアムを実施している。福祉連動型・社会貢献型実証実験だ。
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