海自FFMと隊員減対策(前編)
Japan In-depth / 2021年1月10日 12時5分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・艦艇乗組員を確保するためにはクルー制は必要不可欠。
・スペック下げ人員削る「安かろう、悪かろう」の省力化は意味なし。
・調達隻数を減らしてもまともなフリゲイトを調達すべきだ。
海上自衛隊の最大の敵は中国でも北朝鮮でもない。人手不足だ。
特に勤務がきつい艦艇乗組員の確保は困難である。米国や英国でも軍隊、特に海軍の艦艇乗組員の確保は難しくなっている。だが、特に我が国は急速な少子高齢化が進んでおり、労働人口減少が顕著であり、労働力を民間企業と取り合うこととなっている。隊員が確保できなければいくら護衛艦や潜水艦を増やしても戦力とはいえない。
財務省の「歳出改革部会」(令和2年10月26日開催)の防衛省に関する資料には以下のようにある。
「自衛官の定数は、近年、約25万人とされているが、少子化の進展や、中途退職の増加により、実際の人員(現員)は約23万人で推移」と指摘、人員確保が困難になって採用年齢を26歳から32歳に引き上げた平成30年の採用対象年齢者の人口は約1,881万人だが、これが令和10年では1,750万人、令和20年では1,563万人まで減少すると予想している。
しかも自衛官は自己都合による退職者が多い。「自衛官を増員する一方、自己都合による自衛官の中途退職者は、10年間で約4割増加し、年間約5,000人。これは毎年の新規採用者の約1/3に相当する自衛官が中途退職していることとなる」「任官後早期(特に4年以内)の退職者が多く、階級別にみれば、曹士クラスが9割超。いわば採用、教育訓練のコストの掛け捨ての状態」(同上)。つまりは、モチベーションが維持できず働くに値しないと思われているのだろう。
その中でも長期の航海があり、洋上での閉鎖空間である艦艇での勤務は人気がない。海幕が2009年に発表した「海上自衛隊抜本改革の実行上の指針」では「長期にわたる航海で一般社会から離れるなどの厳しい艦艇乗員としての勤務環境と、現代の若者気質が乖離」とし、護衛艦隊部隊の充足率の向上、定員の考え方の見直し、業務の削減と効率化、女性自衛官の採用・登用の拡大、多角的な広報の推進とし、「護衛艦部隊の充足率については、平成26年度までには90%以上に回復することを目標とする」とされていた。山村浩海幕長によればこの目標は達成されたとのことだ。だが、依然状況は厳しい。
問題は職業的な環境だけではない。海上自衛隊では長年、いじめ、特に逃げ場のない艦艇内部でのいじめが横行してきた。しかもそれを組織ぐるみで隠蔽する体質まである。(※参考記事)
▲写真 海上自衛隊入隊式の様子(2019年 横須賀教育隊) 出典:海上自衛隊 facebook
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