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海自FFMと隊員減対策(前編)

Japan In-depth / 2021年1月10日 12時5分

筆者は昨年、河野太郎防衛大臣(当時)や山村浩幕僚長にも護衛艦乗員の充足率を質問したが、「手の内を明かすことになると」と拒否された。





充足率が9割を超えているのであれば、さほど深刻であるまい。達成後に充足率が下がったのだろうか。筆者が見聞きした範囲では護衛艦の充足率は9割を超えているようには思えない。8割にすら達していないように思える。実際に海賊対処などに派遣される護衛艦は乗員を掻き集めて送り出していると聞いている。





その他の補助艦艇などでは充足率は更に低い。護衛艦には本来定員上は医官が乗り組んでいることになっているが、医官の搭乗している護衛艦はゼロだ。例外的に海外派遣のみ医官が搭乗する程度だ。





対して同じ「船乗り」が多い海上保安庁では「海上安保体制強化に関する方針」を平成28年に定めて中途退職者を減らしている。具体的には入庁後のミスマッチ要因(業務イメージの乖離等)の削減、 柔軟な人事管理(ストレスの少ない初任地配属等)、 相談体制の充実(悩み等の早期把握と対応等)、その結果、急増している若年層(30歳以下)の中途退職率は、直近で1%程度に抑制されている。





海自は「手の内を明かすことになる」などといわずに、納税者に対して艦艇乗組員の充足率を明らかにすべきだろう。多くの納税者、そして政治家すらもこのような艦艇乗組員の低充足率の事実を知らない。これを隠蔽しておいて、いざ有事になって海自の艦艇が乗員不足でほとんど動かない、あるいは容易に撃破される、医官が乗っておらず、けが人の治療ができずに不要に死ぬ方がよほど大きな問題だ。





第二次世界大戦でも帝国陸海軍は都合の悪い情報を国民に隠蔽して「無敵皇軍」を演出し、メディアもそれを無批判に報じた。これが戦争に安易に突入した一要因でもあり、民間人にも多大な被害を出して敗戦した。





軍隊や自衛隊という秘密の多い組織こそ、できるだけ情報を公開することによって、組織の独善や独断専行を防ぎ、組織の透明性を担保するのが民主国家のありようだ。現在の防衛省・自衛隊の組織防衛のための秘密主義は国民の権利を侵害しており、有事に際してその対価は隊員と国民の血で支払われることになる。





乗組員の充足率の改善について海自も重い腰をあげて、乗員の負担軽減のためのクルー制の導入を開始した。11月に海自の新型フリゲイト艦、FFMの二番艦「くまの」が一番艦に先んじて進水した(一番艦は不具合が発生して進水が延期となった)。FFMの最大の目玉は個艦としての能力ではなく、むしろクルー制の導入だ。





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