防衛省秘密主義、元凶は記者クラブ
Japan In-depth / 2021年5月24日 13時7分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・防衛省・自衛隊の秘密主義がずさんな調達や税金の無駄遣いにつながっている。
・その秘密主義を支えているのが記者クラブという当局との癒着の構造。
・情報開示は文民統制の基幹だが、我が国は北朝鮮や中国に近い落第レベル。
防衛省、自衛隊は他の民主国家と比較すると情報開示に消極的だ。他国の国防省や軍隊が当然公開している情報を「手の内を明かさないため」と称して秘密にする。筆者は防衛ジャーナリストとして30年以上内外で取材してきたが、情報開示という点では防衛省や自衛隊は民主国家よりも中国や北朝鮮のような全体主義国家に極めて近いのが実態だ。
民主主義と軍隊(自衛隊)の文民統制の基盤は、情報公開である。その基盤の上に立って政治が軍隊の人事と予算を監督することになる。情報公開の基盤がなければ、いくら人事や予算の決定権を握っていても政治が文民統制を行っているとはいえない。
このような防衛省、自衛隊の秘密主義を支えているのが記者クラブという日本独自の奇異なシステムだ。
まずは防衛省、自衛隊の情報開示のレベルを見てみよう。装備調達に関して、諸外国では新型装備を導入するにあたって、何をどのような理由で開発するか、調達に際しては調達数、調達期間(そして戦力化までの時間)、総予算を議会に示す。その後予算が承認されて、メーカーや商社など供給者と契約を行ってプロジェクトが実働する。ところが我が国では多くの場合、国会議員は調達数も調達期間も、総予算も知らされていない。
かつて筆者は防衛関係に強い議員の勉強会で「皆さん、10式戦車の調達数、調達期間、調達の総予算をご存知ですか?」と聞いたことがある。ところが誰一人知っている議員はいなかった。つまり国会および国会議員が装備調達の全貌を知らされず、必要な情報が開示されないまま、新装備の開発が決定され、調達が開始されるのだ。無論防衛省の内局や幕僚監部では調達の見積もりや予定は策定しているが政治家には見せない。これは本来機能しないはずだが、我が国では「常識」となっている。
この話を筆者は日本と防衛関連の協定を結ぼうと動いていた、英国防省の高官に話したら文字通り腰を抜かさんばかりに驚愕していた。他国の国防関係者や軍人でも似たような反応を示す。それだけ我が国の調達は奇異である。
政治家にきちんと情報を知らせずに、防衛省や自衛隊だけで計画をすすめるからとんでもない間抜けな事態が起こり、税金を無駄にする。例えば陸自のAH-64Dの調達で富士重工(現スバル)と揉めた件だ。
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