「ロシアは歴史的な選択ミスをしたというくらいに追い込まないと、侵略に対するペナルティにならない」慶応義塾大学総合政策学科神保謙教授インタビュー
Japan In-depth / 2022年7月4日 12時7分
まさにこれはNATOの拡大とか、アジア太平洋における同盟の強化とか、太平洋と大西洋双方の関係についてアメリカの影響力が拡大するといったことについては反対し、多極化世界を目指すため中露が基軸となって協力する話だったと思います。
そこでロシアがウクライナ侵攻をしてしまった。ということはおそらく中国にとっては番狂わせで、余計なことをしてくれたな、という気持ちだったと思います。それは昔のジョージア侵攻と2014年のクリミア戦争の時にも原理的には同じことです。
基本的に中国は台湾問題を見透かして、領土の一体性と主権の尊重については実は譲れない原則なんだということを本来であればロシアと共有したかったのです。この原則はウクライナに対しても例外ではないという言い方を中国の外交部もしていたので、実は今回の件は中国に都合がよくなかったと思います。
ただ、中国がどう対応していくかという選択肢は、ロシアを全面的に支えるところから、ロシアと距離を取ってむしろG7と歩調を合わせて行くところまで幅広くありましたが、中ロ関係の発展が既に中国共産党の中では新たな世界を構築する上での既定路線となっており、首脳外交の中でも確認事項ですから、その路線を変えるわけにいかないというのが出発点でした。
だとするとロシアを全面的に支持するわけではないが、アメリカやNATOにとって完全に有利な形でロシアが弱体化することは避けなければいけない。だから、ロシアを支え続けるわけです。
そういう選択肢を取っているのが第一なのですが、では第二に何をどうやったらこれをよりよく結果としてもたらして、どうなると悪いのかについて。
現在中国はいろいろな計算をやっていると思うのですが、おそらくこうなったらいいという選択肢の一つは、今回の戦争の結果、アメリカの弱さが明らかになることです。例えばアメリカが直接軍事介入できなかったとか、ウクライナを十分に支え切れなかったといった対外的な介入の弱さにつながるといいのではないかと考えました。
もう一つはアメリカがヨーロッパにコミットした結果、インド太平洋に対するリソースの配分が出来なくなって、インド太平洋への関心が薄れること。その間に彼らの影響力が拡大するようなことができれば結果としてはすごくいいことだと考えたのだと思います。
では何を避けたいのかというと、このウクライナ戦争の結果、NATOが拡大してヨーロッパが結束し、その流れに多くの国々が乗ってしまうような流れになることです。
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