1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「ロシアは歴史的な選択ミスをしたというくらいに追い込まないと、侵略に対するペナルティにならない」慶応義塾大学総合政策学科神保謙教授インタビュー

Japan In-depth / 2022年7月4日 12時7分

さらにこの結果、台湾に対するアメリカの影響力が同盟や台湾のコミットメントのような形で強まり、台湾を統合する流れが遠のいてしまう結果をもたらすこと、ロシアが本当にオウンゴールどころかアシストをしてしまうということになれば非常にマイナスです。全体の中国の考えているリスクと利益の計算がこの100日間で変化したのではないかというのが今の私の見方です。


安倍: 中国にしてみるとロシアとの間に結んだ既定路線を変えるわけにはいかない、3期目の国家主席が誰になるかは置いといて、それを180度変えるわけにはいかない。しかし過度に加担するとまたおかしなことになるから距離を保ちつつも、ロシアを見捨てるわけにはいかない。かと言ってアメリカもバイデンは中間選挙を前に下手を打ちそうにない。このような状況を見ると中国は難しい舵取りを迫られているのではないでしょうか。


神保: 今回の件については基本的にはマイナスの方が大きいと思います。本来であれば、ロシアがアメリカとの戦略的核削減交渉を延長して、戦略的安定性に関する協議をやっていたはずです。ロシアとの問題についてアメリカが十分にエネルギーを割いて、その中でアメリカといろんなところで協調して向き合うという関係をじわじわとやり続けるというのが中国の考え方でした。この構図が変化してしまったのが中国にとっては非常に大きな問題なのではないか。


私も北京大学、復旦大学や清華大学など色んな大学の会議に呼ばれて、その際にウクライナについてのコメントを(中国側に)当然求めるのですが、「その件については語りたくない」、と皆さんとても慎重なんです。つまり方針があまり決まってないのではないかと思います。ここで失言して報道されたりすると自分の職のリスクになるような関係があって、今回の問題をどう指導部が定めるか明確に分かるまでは口を開けないみたいな雰囲気があります。中国の人は既定方針があればペラペラ喋るじゃないですか。それがあれほど慎重になるというのは相当緊張感のある立場の取り方を模索している時期なのではというのが私の推測です。







▲写真 NATO首脳会合に出席するバイデン米国大統領と他の国の指導者ら(2022年6月29日、スペイン・マドリッド) 出典:Photo by Stefan Rousseau - WPA Pool/Getty Images


■ 日本の立場


安倍: NATOの結束が強まり、アメリカの支援などもあり、軍事力も物資的に増強されている。新規加盟国も増えている。あろうことか日本もNATOに接近し始めて閣僚並びに総理まで顔を出す。こうした動きを考えると、これもロシアと中国にとって全くよろしくない動きということですか。


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください