「ロシアは歴史的な選択ミスをしたというくらいに追い込まないと、侵略に対するペナルティにならない」慶応義塾大学総合政策学科神保謙教授インタビュー
Japan In-depth / 2022年7月4日 12時7分
ただし、2月24日以前の状態ほどには押し戻して停戦しないと、結局ロシアが得るものを得て戦争が終わってしまうので、その場合侵略によって結局ロシアはプラスを得た、となってしまうことはアメリカは避けたい。だとするとしっかりとロシアは今回歴史的な選択のミスをしたのだというくらいに追い込まないと、侵略に対するペナルティを与えたことにならないと思います。
このようなことを最終的には中国に対して示していく。ペナルティが弱かったり、経済制裁が弱かったりしてロシアが、普通に5年後経済が戻ってしまったとなると、結局侵略行為をしたとしても、国際社会ができることはこの程度なのかなどという教訓を中国にもたらすことは、極めて良くないと思います。
▲写真 インドネシア、ジョコ・ウィドド大統領と会談するプーチン露大統領 (2022年6月30日、ロシア・モスクワ) 出典:Photo by Contributor/Getty Images
■ 日本の安全保障戦略
安倍: 翻って日本の安全保障戦略です。インド太平洋に軸足を置いていますが、NATOにもアプローチしたい等いろいろあります。尖閣を中国に占領された時に必ずアメリカが兵を出すのか出さないのかという論争もあります。そのような中で、日本の安全保障戦略がもう少し独自性を増していく方向に行きますか。
神保: そう思います。アメリカのコミットメントを担保するには、アメリカがコミットメントを発揮する場所に集中できる環境を作るというのがとても大事です。
2010年代前半であれば、日本を取り巻く安全保障上の問題は、尖閣などの所謂グレーゾーンの問題で、アメリカにもコミットメントを求められる状態でした。日米防衛協力のガイドラインの焦点も、武力紛争に至る前の段階から日米同盟は全部のフェーズに作用させるべきであると言っていました。2014年のクリミアの件もあって、中国に対して尖閣をグレーゾーンやハイブリッドな手法で取らせないための牽制をしたかった、だからその点は非常に重視されたと思います。
ところが、2010年代後半から現在に至るまで、台湾に問題意識が向けられるようになると、尖閣程度の問題は自分たちで解決してほしい、というアメリカの思いが非常に強くなったように思います。あれほど小さな島を守ることに対してまで比較的早期の段階で、防衛費を1%しか使ってない国が「同盟を機能させろ」「コミットメントをしっかりさせろ」と言わないでほしい、というのがアメリカのフラストレーションの元になってしまった。それを明確に言ったのがトランプ政権です。
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