「ロシアは歴史的な選択ミスをしたというくらいに追い込まないと、侵略に対するペナルティにならない」慶応義塾大学総合政策学科神保謙教授インタビュー
Japan In-depth / 2022年7月4日 12時7分
そう考えると例えば経済分野で見れば、サプライチェーンのレビューを積極的にやって、その中で中国に過度に依存するような戦略物資についてはできるだけ組み替えて、同盟国友好国の間でのサプライチェーンのダイナミクスを作ろうということもあるし、トランプ政権でできた例の投資規制とか輸出管理とか機微技術の移転防止といった枠組みはむしろバイデン政権の中では強化されているので、自由に中国が経済活動してくださいといったことは全然言っていません。
そう考えると中国との協調関係を第一に考えているとはとても言えないのがバイデン政権の特徴として挙げられていて、緊張感はおそらく解けていないと思います。さらにいうとトランプ政権とバイデン政権を隔てるもう一つの物はやはり人権とか価値の問題だと思います。
依然として新疆ウイグルとか、中国の人権とか香港の問題に関して、民主党の左派も含めて、厳しい見方をしている方が多い事を考えると、価値の問題をやりすぎると、ガバナンスの話になってしまう可能性があることを中国も重々わかっているので、そのように考えると、中国もバイデン政権に対して協調しすぎ、接近しすぎによるガバナンスの危機というのは結構大きいと思っています。例のブリンケンのアンカレッジ会見から続いている、中国のアメリカへの強烈な不満が表れているのではないかと思うので、私は依然として米中関係の見通しについてはかなり悲観的です。
▲写真 戦争で負傷した兵士を救助する訓練の様子(2022年6月18日、台湾・新北市) 出典:Photo by Annabelle Chih/Getty Images
■ ウクライナ戦争 米の目的
安倍: ブリンケンとオースティンがウクライナに行ってゼレンスキーに会った時に、明確にアメリカの意図は(ロシアを)「二度とこのようなことをしないように弱体化させる事である」と明言したことに驚きましたが、戦争の目的が明確になったということであって、あれはロシアに対するメッセージでもありますが、中国に対するメッセージということも言えますか?
神保: その通りだと思います。勿論、第一義としては戦争をどう終わらせるか、どういう状態にしていくかということで、アメリカの中でもこの議論は十分に煮詰まっていないと思います。バイデンも今回は失言だと思いますが、プーチンを政権から引きずり下ろす、というような発言をしているのですが、これ自体は確か即座に修正してるはずです。つまりロシアのレジームチェンジを目指すことがこの戦争の終わり方などと言い始めると、ロシアは核兵器を使いかねない追い込まれ方をしてしまうかも知れないが、そのようなリスクをもたらすことはおそらくアメリカの目的ではないと思います。
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