「ロシアは歴史的な選択ミスをしたというくらいに追い込まないと、侵略に対するペナルティにならない」慶応義塾大学総合政策学科神保謙教授インタビュー
Japan In-depth / 2022年7月4日 12時7分
バイデンが通常戦争を避けたい人だと中国が理解すると、台湾に本当に侵攻してしまうかも知れない。侵攻をほのめかすような脅しがあったとしてもアメリカは戦うと是非言わなければならないと私は思っていたので、それをイエスとシグナルしたことは非常に重要でした。したがってこの大統領の認識としてのイエスと言う発言は依然として有効だと思っています。
安倍: その意味ではダブルスタンダードは生きていると言うことですね。
神保: はい。そのダブルスタンダードこそが「新しい戦略的曖昧性」だと思います。ambiguityというのは、公式声明としてのambiguityとは別に大統領の認識とアメリカの公式の立場が少しずれてると言う意味での曖昧性が、新しい曖昧性だと私自身は解釈していて、そのレベルにしておかなければ中国に対する抑止は難しいと判断してるのではないかと思います。
■ 米中関係の今後
安倍: 中国はアメリカに融和のシグナルを送っているとの見方もあります。
神保: それはわかりませんが、ただ中国は結構大枠を大事にする国だと思います。例えばトランプ大統領が蔡英文に接近しようとした経緯は、大統領就任後ということが結構あるわけです。しかし習近平がマ-ルアラーゴにいって初めての米中首脳会議をした時に最初に中国が確認したかったことはアメリカの「一つの中国」が変わっていないかどうかでした。トランプはそれを理解していたかどうかは別にして、「ワンチャイナポリシーは続いている」と言いました。これは中国にとっては満額回答です。ということはもし台湾をディフェンドする事にイエスと応えても、アメリカから依然として一つの中国という政策は変わっていない、と言ってさえいればこれは中米関係にとっては大事だということになるので、そこを確認すること自体はアメリカは今までもやってきたし、それが台湾を防衛しないということにもなるので、そういった広い解釈の原則であるならばいくらでも中国に対して示してあげればいいと思います。
安倍: アメリカは中国と事を構える気はなくて、ある程度良好な関係を中国と築こうといったニュアンスで臨んでいるということでしょうか?
神保: それも違う気がします。中国とのengage関与という言葉については、ワシントンの中ではほとんど死語になってしまうほどに、大国間の競争関係にあるという捉え方をしているのだと思います。もちろんこの競争関係は相手を完全に追い詰めて無くしていくということではなく、中国の影響力の拡大が地域とグローバルな秩序の中で主導的な地位になってしまうことを防いで、アメリカと同盟国との関係が秩序をリードしていく世界を、どう作り出すかという競争だと捉えています。
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