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「石原慎太郎さんとの私的な思い出6」続:身捨つるほどの祖国はありや21

Japan In-depth / 2022年8月9日 23時17分

「牛島さん、この世はね、所詮、男と女なんだよ」と一度ならず二度、三度と諭してくれた石原さん。アルコールの入っているときもあった。


「そうですか。石原さんが言われるのだから、きっとそうなんでしょうね


でも、私は、自分の小説には、個人と組織というものの絡みをいつも意識しているのです。個人が集まると組織になる。組織になってしまうと個人にはあり得なかったことが起きてくる。良いことも悪いことも。個人は組織のために人生を決定され縛られてしまう。その個人には、男性と女性がいる。そう思っているのです。」


そう言った私に、石原さんははかばかしい答えをしなかった。


しかし、思いもかけず私の言った「それ」を思い知らされたのが、新銀行東京の試みだったのではないか。


「新銀行の破綻は大問題となり、これが潰れれば関係者一万人余の人生の破綻ともなり、立て直しのための追加出資四百億円を議会に了承させるために四苦八苦させられたものだった。都政に携わってから、あの時ほど懊悩させられたことはなかった。」(185頁)


そう書いている石原さんは、なんとも驚くべきことに、こう続ける。


「そんな時、私がある折に心中を語り、『こうなったら神仏に頼るしかありはしない』と漏らした言葉を捉えて、彼女が彼女なりに願をたてて事の安堵を祈願して、あなたのためにこれからふた月、毎日フルマラソンに近い四十キロを走って見せると言い出した。」


その女性とは、「東京都知事をしていた私は、東京の隠れた魅力を分かりやすく紹介するために、才人のテリー伊藤に頼んで」始めたテレビ番組の論文募集に応じた女性だったという。(176頁)


「趣味が異常な犯罪への興味」だというその女性については、また、石原さんのそうした、驚くべき作品との絡みで取り上げたいと思っている。


その女性は走り過ぎが原因で大腿骨部に損傷を来たした結果としての大手術をすることなる。それが、「術後の苦痛たるや大層なもので、見舞いに行った海の仲間たちが思わず目を逸らすほどのものだった。しかもその最中に彼女は他の仲間を部屋から外させ、私にセックスをせがんできたりした。それが苦痛にさいなまれている彼女のどれほどの救いになるのか分からぬまま、私はそれに応えてやりまでした。」(186頁)


いったい何ということか。都知事石原慎太郎の私的空間での隠された姿である。


ここを読んだ私は、『亀裂』の主人公で若い石原さんの分身である都築明なる男が、結核を病んでいた恋人と性行為に及ぶ場面を思い出していた。血を吐きながらも男に抱かれることを望んだ女性の話だ。


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