「石原さんとの私的思い出7」続:身捨つるほどの祖国はありや22
Japan In-depth / 2022年9月21日 21時0分
入院が決まって、部屋を下見に行った。すると、ベッドが細長く、小さい。
私は案内してくれたM医師と病院長のK教授に、
「お世話になり、ありがとうございます。でも、申しわけないのですが、私はダブル以外のベッドには、ここ20年来、一晩だって寝たことがないんです。もちろん一人で寝るんですが、ベッドはどんなときでも、海外に出かけたときも国内で出張のときも、例外なくダブルなんです。あのベッド、なんとも小さいですよね。きっと私は眠れないと思います。そんなこと、とお笑いになるかもしれませんが、これで私は真剣なんです。眠りには過度に神経質なんです。今からでも、夜中一睡もできない自分が想像できます。どうかお願いですから、ベッドをダブルにしてください。」
私は、目の前のK教授に頼んだ。隣にはM医師がいて困った顔をしている。
「いや、そういうものはこの病院にはありません」とK教授。おかしなことを言う人がいるものだとあきれ顔である。今考えて見ても、汗顔のいたりである。そもそも慶応病院ほどの大病院で教授と直接話すだけでも、ふつうにはあり得ないことに決まっている。M医師がK教授に紹介してくださったおかげなのだ。
私はとなりに座っているM医師に向かって頼んだ。
「M先生、先生からもお願いしてください。一切の費用は私が負担します。病院には決してご迷惑をかけませんから」
目の前に座っているK教授は、「いや、それはできません」の一点張り。M医師も、私に向かって、「そりゃあ無理だよ、牛島先生」となだめにかかる。
私も必死だった。私は55歳になるまで入院どころか骨を折ったこともないのだ。生まれて初めての入院は自分にとっては大事件なのだ。風邪を引いたことはあっても、熱をだしたことはあっても、怪我でも病気でも病院に泊ったことなど一度もない。私は、直前に見てきたばかりの、心細いほど細長いベッドの光景を思い出しながら、手術の後、そのベッドに運ばれて、そのうち麻酔が覚めて横になっている自分に気づく。そしたら、すぐに、見慣れない、細長いベッドに転がっている自分を発見する。きっと一晩中眠ることなどできるわけがない。私は睡眠については他人には思いもよらないほど過敏なのだ。絶対に一睡もできないに決まっている。恐怖に近い気持ちで一杯だった。
すると、突然、M医師が、「牛島先生、入院していると患者の身体を移動させるために、ベッドの両側から看護師さん二人がかりで患者の身体を持ち上げなきゃならないことがあるんですよ。だから、幅が広いベッドではそういう作業ができないんですからね。あの巾じゃないとダメなんです」と説明してくれた。
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