平成13年の年賀状「車と私」・「人の心と会社経営」
Japan In-depth / 2023年5月10日 11時0分
先生は笑い出した。あたかも時機の過ぎた今、もう熱心に説明する張合がないと云ったふうに。
『金さ君。金を見ると、どんな君子でもすぐに悪人になるのさ』
私は先生の返事があまりに平凡過ぎてつまらなかった。」(『心』二十九)
『心』を読んだ方は、先生が田舎で叔父にどんなにひどい目に遭わされたのかを知っているだろう。父親を亡くした先生の財産を預かって、勝手に使ってしまったのだ。その上先生にその娘、従妹を娶(めと)らせようとする。
いつでも、どこでも、いまこの瞬間にも、起きていることだと私も知っている。
弁護士である私はもっと知っている。金を見たときが借金の返済に苦しんでいるときであれば、ふだんであれば出てこない手が喉から出てくる。人の世は恐ろしい。人は恐ろしい。
芥川龍之介は『侏儒の言葉』のなかで言う。(ちくま文庫全集7巻 178頁)
「人生は地獄よりも地獄的である。地獄の与える苦しみは一定の法則を破ったことがない。・・・しかし人生の与える苦しみは不幸にもそれほど単純ではない。目前の飯を食おうとすれば、火の燃えることもあると同時に、また存外楽楽と食い得ることもあるのである。のみならず楽楽と食い得た後に、腸加太児(かたる)の起こることもあると同時に、また存外楽楽と消化し得ることもあるのである。」
世に盗人の種の尽きない理由である。どんな犯罪でも必ず処罰されるなら罪を犯すものはいないだろう。追い詰められて、必死になって我知らず敢行してしまった犯罪。犯人はその罪の意識にしばらくはおののいている。ところが、なんと誰もなにも気づかずに過ぎてしまうことがある。よくある。
そうなると、止める理由がなくなってしまう。心が麻痺してしまうという表現があるが、あれである。勝ち続けている賭け事から降りるのは難しい。完全犯罪が実行できてしまったら、それを繰り返さないことは困難極まる。一回目にはそれを決して繰り返すまい、一度限りと固く心中に誓ってみても、次の誘惑に打ちかつことは難しい。
なにも犯罪といった極端なことに限るわけではない。
たまたま或る事情で、たとえば社外役員になるのなら自社株を持ってほしいと言われて買った株が値上がりしたところで退任して売却が自由になり、たんまりとキャピタルゲインを得たとする。今度はそうした事情がなくとも株を買ってしまう人はいるのではないか。二度目もうまく行ったら?二度あることは三度あるとなる。
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