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平成13年の年賀状「車と私」・「人の心と会社経営」

Japan In-depth / 2023年5月10日 11時0分

車については、最高の友人がいた。カーレースのレーサーとして何年も続けて日本一になったどころか、日本初のF1レーサーになったほどの男で、私がさて何を買ったものだろうとアドバイスを求めたら、ベンツ、の一言だった。


彼はとても親切で、いい車があるから一緒に見に行きましょうと国道八号線付近の外車の中古車屋さんに、自らの車の助手席に私を乗せて連れて行ってくれた。車についてまったく知識も興味もない私は、彼の車の助手席から降りて辺りを見回し、どうやらこの辺りにはそうした店が多いらしいなという程度の感覚だった。


白いベンツ、E200が一目で気に入った。前部のタイヤの上側の部分、フロントフェンダーの部分の盛り上がりが、鍛えられた女性の太腿の膨らみを思わせ、左右のその張り切った姿態がなんとも官能的に感じられた。そこに惹かれたのだ。白い色、そこに黒い革の内装が歯切れのいい印象だった。満点。彼に大いに感謝し、その場で買うことに決めた。出会いである。


三田の家から青山ツインまでの数キロ。快適な日々が始まった。自分がベンツを運転して事務所にかよう身分になっていることが不思議なような、こそばゆいような、うれしい思いがする寸刻だった。ほんの10分かそこらだったのだろうが、それでもいくつかの経路がある。何回かの試行錯誤を繰り返して、これが一番楽で速いという道を探し当て、そこを運転して往復する日々が始まった。


青山ツインの地下にある駐車場には、それまでにすでに馴染みはあった。1985年4月18日に青山ツインで働き始めたときの私にはネームパートナーがいて、その方は大変な金持ちと噂されている弁護士だった。自ら、あるいは専用の運転手さんが運転するベンツのS560という大きな車に乗っていた。弁護士会で同じ委員会に属していたから、その委員会に出たときには帰りに便乗させてもらうことがなんどもあった。 


ビルの駐車場というものは、ビル自体とは違って、化粧仕上げのされていない、コンクリ―ト剝き出しの粗野な造りである。私はそのことにとても違和感があった。なぜビル会社は駐車場の見栄えを良くしようと考えないものなのかと不思議な気がした。今の山王パークタワーの駐車場は、出入口などがだいぶ立派にできている。仕事の関係で車に乗ってお訪ねするいろいろなビルもずいぶんきれいな仕上げになっているようだ。だが、やはり車が走行し駐車する部分はコンクリート剝き出しである。高級ホテルにしても同じこと。車のための走行、駐車スペースというものは、ほんの附属物に過ぎないということなのか。それとも車が相手の場所だから、ぶつけられたり擦られたりする機会が多く、そのうえ油も飛んだりもするから、上質な仕上げなど意味がないのか。わからない。車というものはもともと馬車から発展したものだし、馬車の時代には自分で運転する人はいなかったから、ビルの顧客自身が出入りすることはなかった歴史のせいなのか、などと考えてみたりする。


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