平成15年の年賀状「宮島、パリ、青山と私」・「広島へのセンチメンタル・ジャーニーと青年弁護士のボルネオ島への旅のことなど」
Japan In-depth / 2023年6月16日 11時0分
検事になった私は1年後に同じことを繰り返すことになる。検事を辞めて弁護士になりたいと申し出たのだ。その年の新任検事から大量の退職希望者が出たことに危機感を抱いたのか、上司から「どこへでも好きなところへ転勤させるから、とにかく今年はダメだ」と言われた。それで私は両親の住んでいる広島への転勤を希望し、その地で退官した。そのときには誰も引き留めなかったどころか、「良く決心したな。検事は転勤、転勤の人生だからな」と励ましてくれた中年の検事さんもいた。
さらに、弁護士になって6年後、また同じことをした。こんどは、或る弁護士に一緒に事務所をやろうと強く誘われたのだ。依頼者を獲得するのが魔法使いのように上手いという評判の、金満家の弁護士だった。それで私は、雇われ弁護士から独立した弁護士になった。丸の内にあるAIUビルから南青山のツインタワーに引っ越した。若い女性秘書のなかには、青山で働けるなんて羨ましいと言ってくれた方もあった。
私の放浪癖は未だ終わらない。
2年7か月後、私はその弁護士と別れて別個の事務所を営むことに決めたのだ。若い弁護士たちがその金持ちの弁護士が弁護士としてあるまじき行為をしている気がすると言い出し、別の事務所を作ってほしい、そこでやりたいと私に強く迫ったことが大きな理由だった。あのときは苦労した。1987年。バブルの頂点近くで、ビルの空室が払底していたのだ。何人もの弁護士とスタッフが私とともに移るに足るスペースを確保しなくてはならなかった。出入りしていた都市銀行の若い青年が、青山の同じこのビルのなかに空いているスペースがあると教えてくれ、その情報をもとに強いコネのあったビル会社の首脳に強引に頼み込んだ。コネがあったのは私の父親である。
一番の難題は、ビル会社の別の首脳が、別々の事務所になった後にも同じビルのなかにいるということになるから、元の共同して事務所をやっていた弁護士の承諾を取ってほしいという条件を付けたことだった。そんな時代だった。その巨大なビル会社は、それほどに長い間のテナントを大切にする文化を大切に維持にしていたのだ。
もちろん、相手の弁護士は承諾しない。間に挟まったのは、ビル会社の管理事務所の方だった。なんどもその相手の弁護士の事務所に日参しては、ひたすら拝み倒すように頼むことを繰り返してくれた。それで私はめでたく22階から14階に移転することができたのだった。75坪の出発だった。
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