平成19年の年賀状 「『我が師 石原慎太郎』、日米半導体戦争、そして失われた30年」・「三回の欠礼、M&Aとコーポレート・ガバナンス、そして人生と仕事」
Japan In-depth / 2023年7月12日 18時0分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
【まとめ】
・私の関心は、日本の失われた30年の原因とその復活の道、未来の姿である。
・日米半導体交渉。1987年4月、中曽根・レーガン会談は決裂した
・日本を子ども、孫の世代に遺すに足る国にするのは、我々団塊の世代の責任。
新年おめでとうございます。
久方振りに賀状を差し上げます。
その間に何があったのか。目の前の仕事を片付けることに追われていると一年が経っています。私の時間は一週間を単位に、それがあたかも一日であるかのように慌しく過ぎ去ってゆくようです。
四月。通りがかりの靖国神社前、桜の花びらが地吹雪のように道路を舐めて走るのを眺めていました。
八月。首都高を走っていると鳴る携帯。電話を返して改めて始まる休みのない夏の時。
夏がいつ来たとも行ったとも知らない、短過ぎる夏の煌めきでした。
一年。仕事に明け、暮れる年。問題は仕事とは何かでしょう。それは自ら定義するものだと私は強く思っているのです。
(1月8日22時からWOWOWで私の小説『MBO』がドラマになります。よろしければご覧ください)
「『我が師 石原慎太郎』、日米半導体戦争、そして失われた30年」
『我が師 石原慎太郎』を書いて、恩師である平川祐弘先生にお贈りしたら、
「牛島信は、このすらすらと綴った私語りで、ついに日本文壇史の中に名を連ねることとなりました」というお言葉をいただいた。
平川先生は、「私はかねがね文学部出身の文学者は幅が狭くてつまらない。法学部や理学部出身者の方が面白い、とひそかに思って居ましたが、」という前置きを置いたうえで、このように誉めてくださったのである。私が天にも昇るほどに嬉しくないはずがあろうか。
「文壇史に名が残る」という言葉に、私は伊藤整の『日本文壇史』という本を思い出した。文壇には広狭二義があるという。なぜ平川先生が文学史ではなく文壇史という言葉を使われたのかは、私にはわかない。石原慎太郎という偉大な作家がいて、その関係者の一人の書いた石原慎太郎との私的時間の話、という意味で、文学史ではなく文壇史と言われたのだろうなと理解した。そこには、石原慎太郎という、ただの文学者を超える人物についての平川先生の高い評価があるがゆえに、石原慎太郎との時間について書いた私の本にも一定の価値があるということのように思われた。
現在の私自身は、日本の文壇なるものにはまったく関心がない。存在しているのかどうかもわからない。以前、石原千秋さんが産経新聞に「時評 文芸」というコラムを連載していらしたころ、石原さんの率直なものいいに惹かれ、毎回を愉しみに、面白く拝読した。狭い、お互いを知りあっている、書かれたものの背後にある書かれていない細かいニュアンスまでも暗黙に了解し合ってコミュニケートしている微小な世界があり、そうした世界の住民がどうやら未だ存在しているらしいということを想像させたからである。
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