平成19年の年賀状 「『我が師 石原慎太郎』、日米半導体戦争、そして失われた30年」・「三回の欠礼、M&Aとコーポレート・ガバナンス、そして人生と仕事」
Japan In-depth / 2023年7月12日 18時0分
「長く尾を引いた」とあるのがなんとも牧本さんの思いを印象的に伝える。そうしたトラウマの状態で日本は構造協議をしなければならなかっただけではない。その後の、今に連なる日々を生き続けているのである。
牧本さんの本を読み始める前から私は、クリス・ミラーの『半導体戦争』(ダイヤモンド社 2023年刊)を読んでいたのだが、牧本さんの本を読み始めて中断した。
そもそも、私がこの二つの本に出合ったのは、令和5年(2023年)3月12日の産経新聞にのっていた「産経書評」欄で、寺田理恵さんが取り上げて論評していたことに強く興味を惹かれてであった。伊藤さんは『半導体戦争』を大きく取り上げ、その次に牧本さんの『日本半導体の復活』に触れていたのだ。
寺田さんは、「80年代になると日本が(初期半導体製品を:筆者注)家電製品に使って世界市場を制覇した。だが、日米半導体協定と米国による対日制裁をきっかけに日本のシェアが急落。90年台に電子産業の主役が家電からパソコンに移ったが、日本はデジタル革命の潮流に乗れなかったと指摘する。」と牧本氏の本を紹介する。
私が牧本さんの本をいかに夢中になって読み進めていたのかは、その本を読み進めながら泊りがけの出張に出る機会があり、それならば出張先での孤独な夜にこの本を読み進めることができると愉しみにしていたのに、なんとその本を持っていくことを忘れた一件が示している。本を持ってくることを忘れてしまったことに気づいた私は、その街の本屋に飛び込み、ちくま新書のなかから『日本半導体の復活』を探し出し、勇躍買い求めて、その夜のうちに読み切ってしまったのだ。私は自分でその新しい本を下巻と名付け、以前の本を上巻と名付けた。それぞれに読む過程でマークが施されているから、一冊では不完全なのである。お話しする機会のあった牧本さんにもそう申し上げた。
牧本さんの本を読み終わり、私はただちに『半導体戦争』に取って返し、これも夢中になって読み切ってしまった。
第20章は「パックス・ニッポニカ」と題されている。
そこにはソニーの盛田昭夫が「ニューヨークにいるときは必ず、メトロポリタン美術館の真向かいにある5番街82丁目のアパートに、市(まち)の富豪や有名人たちを招いた。」(161頁)と記載されていている。また盛田が、「アメリカが弁護士の養成に励んでいるあいだ、日本は技術者の養成に精を出していた。」と説いた、とあり、さらに盛田は、「今こそ、アメリカの友人たちにはっきりと伝えるべきときだった。日本式のやり方の方が単純に優れているのだ、と。」と、出典を盛田の『made in Japan』として、「日本の経営者陣が「長期的」にものを考えるのに対して、アメリカの経営幹部たちは 、「今年の利益」にこだわり過ぎた。」とも振り返る。それは、1989年の盛田と石原慎太郎の共著『「NO」と言える日本――新日米関係の方策(カード)』につながる。
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