平成19年の年賀状 「『我が師 石原慎太郎』、日米半導体戦争、そして失われた30年」・「三回の欠礼、M&Aとコーポレート・ガバナンス、そして人生と仕事」
Japan In-depth / 2023年7月12日 18時0分
しかし、第28章は「日本経済の奇跡が止まる」と題されている。
そこでソニーの盛田はこんな風に描かれる。
「ジャパン・アズ・ナンバーワンの体現者だった彼にとって、この言葉を信じるのはたやすかった。ソニーのウォークマンをはじめとする消費者家電を追い風に、日本は反映を遂げ、盛田は財を築いた。」(219頁)
「ところが、1990年に危機が襲いかかる。日本の金融市場が崩壊したのだ。(中略)一方、アメリカはビジネスの面でも戦争の面でも復活を遂げる。わずか数年間で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」はもはや的外れな言葉に思えてきた。日本の不調の原因として取り上げられたのが、かつて日本の産業力の模範として持ち上げられていた産業だった。そう、半導体産業である。」(220頁)
クリス・ミラーが述べる日本の半導体産業の崩壊は、牧本氏の本を読んでいた私には地政学的な歴史分析が足りないように思われる。
日米の力関係のことである。彼は、日本の半導体産業は「政府が後押しする過剰投資という名の持続不能な土台の上に成り立っていたのだ。」と結論づけ、日本の経営者の怠慢を非難する。そして、「アメリカの非情な資本市場は、1980年代にはメリットと思えなかったが、裏を返せば、融資を失うリスクこそがアメリカ企業を用心させたともいえる。」(221頁)
そんな単純な話だろうか。そこにはレーガン・中曽根会談の決裂は登場しない。要するに政府の不当な保護のもとにあった日本の半導体産業が、バブルの崩壊で当然のようにつっかえ棒を失ったというだけのことである。野放図に膨らみ、高転びに転んだ、ということだけである。
アメリカ政府がなにをしたのか、日本のトラウマとして長く尾を引いた背後に決定的なものがあったのではないか。アメリカ人である著者には、日米半導体協定とその後は重要なものとして目に入らないのかもしれない。
盛田が1993年に脳卒中に倒れ、健康に深刻な問題を抱え、公の場から姿を消し、「余生の大半をハワイで過ごした末」、1999年に息を引き取ったという記載は、正に「パックス・ニッポニカ」の破綻の象徴として記載されている。(223頁)
私の読書は、もちろん仕事の合間でしかあり得ないから、一読本を置く能わずということは少ない。たびたび置かざるを得ないのである。それでも、この本は巻を置いてもまたすぐに取り上げずにはおられないという意味で、まことに面白かった。
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