平成26年の年賀状・「本を読むことこそ我が人生」・「ヘミングウェイの『移動祝祭日』と石原さんのこと」
Japan In-depth / 2023年11月16日 12時26分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
この一年間、或る事情があって私の時間は停まっていました。その空間のなかで、ぐるぐるとハツカ鼠のように走り回っていたのです。
一段落してみると、それもまた人生の一コマだったようです。
――「世の中にかたづくなんてものはほとんどありゃしない。ただいろいろな形に変わるからひとにも自分にもわからなくなるだけのことさ」という、漱石の言葉が浮かびます。(『道草』)
弁護士としての仕事。その合間に独り文章を読み、書くこと。人と話すこと。
私の心のなかに、「低い雲を黄に赤に竈の火の色に染めた夕陽」(『門』)への憧れがあります。夢を見ているのです。
夕陽が落ちたら?
「山のお寺の鐘」を聞くには、未だもう少し時間がありそうな気がしています。
人とは何か、日本人とは何か、組織とは何か、未来はどうなるのか。そうしたことを考え続けていたいのです。またご報告させてください。
『本を読むことこそ我が人生』
【まとめ】
・本を読むこと以上の快楽はない。
・私の好奇心と想像力はとどまるところを知らない。
・過去、なにかがあったこと、なぜそうあったのか、その後どうなったかを知っていると、現在もそのように変わりうると推測ができる。
「山のお寺の鐘を聞く」とは、すなわち死を迎えることである。「未だもう少し時間がありそうな気がしています。」と書いたのは2013年の末のことだから、もう10年も前のことになる。
現在も、未だ寺の鐘を聞くまでにはもう少し時間があると思っている。おかしなものだ。10年1日というわけでもあるまいが、10年前の私は今の私と少しも変わらない。人の心は歳をとらないのだ。
「ただいろいろな形に変わるからひとにも自分にもわからなくなるだけのこと」なのかもしれない。
弁護士としての仕事はあいかわらず多い。その上、弁護士事務所の経営者としても考えなくてはならないことは引きも切らない。
弁護士事務所という組織を経営したくて弁護士になったわけでは毛頭なかった。しかし、100人を超える人の集まりは一定の管理を要求する。なんのことはない、中小企業の経営者である。外に向かってはコーポレートガバナンスについて講釈をしたりするのだが、自らの組織はどうなのか、とつくづくと思うことがある。この組織に属している人々は、それぞれにやり甲斐と幸福感を持つことができているのか、いつも気になってしまう。
こんな中堅企業の経営であっても、誰かが人生をかけて真剣に取り組まなくてはならない。
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