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平成26年の年賀状・「本を読むことこそ我が人生」・「ヘミングウェイの『移動祝祭日』と石原さんのこと」

Japan In-depth / 2023年11月16日 12時26分

義務?





幸いに、いっしょに経営に参画してくれる人々がいる。20人を超える。独りではないという思いは、いつも私を鼓舞する。お互いの議論はものごとの筋目を明らかにしてくれる。だからといって、孤独でなくなるというわけではない。世の組織のトップというものは、大小を問わず、一日24時間、同じ悩みを悩んでいることだろう。





「或る事情」というのは、大きな事件があって高等裁判所に係属していたことを意味している。私と共に担当していたチームの面々は高等裁判所の裁判官に事態を正当に理解してもらうことに必死だったのである。「一年間」経って、その努力はそれなりに報われた。「停まった空間のなかで、ぐるぐるとハツカ鼠のように走り回っていた」甲斐があったと嬉しかった。





しかし、終わってみると、所詮「人生の一コマ」でしかないと感じたのだろう。そうしたことの積み重ねで人生の刻が流れ去ってゆき、戻ることはない。裁判制度は「世の中にかたづくなってものはほとんどありゃしない。」の例外ということなのだろう。しかし、裁判は人生の、あるいは私の関わっている分野でいえばビジネスの一部でしかない。その裁判を取り巻く全体像は、片づくことなどありえない。現に失業を心配する裁判官はいないに違いない。時間は未来に向かってどんどんと経過してゆくのだ。振り落とされないだけでも全身全霊をこめなくてはならないことが少なくない。





そういえば、この高等裁判所の件は最高裁に行ったが、結果は変わらなかった。





私は「弁護士としての仕事」を愉しんでいるのだろうか?





なぜ「合間に独り文章を読み、書く」のだろうか?





本を読むこと以上の快楽はない。「そうだったのか」と、知らないでいたものごと、世の中がよりよく理解できた気持ちになることができる。文学よりも経済や政治の本を読むことが多い。私には、現在の文学者の言っていることよりも興味の駆られることがあまりに多いのだ。厳密な論理と証拠に基づく推論の世界にふだん住んでいるせいかもしれない。





私のなかには、晩年「私は聖書と日刊新聞以外を読まない」と言ったというポール・クローデルの境地が理解できるような思いがある。彼は本職の外交官で駐日大使であった一時期もある。そういえば荷風も晩年、鷗外以外は読むに堪えないと言っていた気がする。





だが、私は日刊新聞以外にも本を読む。本には鷗外以外はもちろん、漫画も含まれる。先日『沈黙の艦隊』を読み終わった。初め紙の本を買った。秘書に全12冊です、といわれてとりあえず3冊を頼んだ。手元にきた本をみると一冊で3センチはある。3冊目の途中まで夢中になってよんだところでキンドル(Kindle)のお世話になることにした理由である。劇画であることも手伝っているのか、便利この上ない。一頁全体に潜水艦の一部の絵があって「ゴーッ」というカタカナだけが描かれた本をその厚い本何冊かをもって大阪へ出張できるものではない。キンドルなら、飛行場へ行く車のなか、飛行機の中、飛行場からの車のなか、手軽なことこの上ない。





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