「平成28年の年賀状」団塊の世代の物語(1)
Japan In-depth / 2024年1月12日 11時18分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
六十六歳になりました。もはや還暦は昔の出来事です。
私は、毎日々々元気に働き、大いに食べ、動き回っています。
四年前の六月二十七日、深夜テレビで『ガンジー』という映画に出逢いました。以来、イギリスとインドの関係、さらには広く先進国と新興国の過去と未来が気になってなりません。もちろん、後から追いついた先進国、日本に生まれ育ったからです。
すると不思議、四十三年前の四月十七日に江藤淳の『夜の紅茶』という本を買って以来、長きにわたって馥郁たる香りで私を楽しませてくれていた紅茶が、新たにイギリスと中国とインドの三角貿易の主役の衣装をまとって目の前に現れました。
毎夜々々のこと。いかなるゆえにわが心が悩むのか、わけもわからないままに焦りがこの胸を焼きます。
ふと気づくと、熱い自分の隣に冷ややかに立って眺めている男がもう一人います。
はてさて。
皆さまの今年のご多幸をお祈りいたします。
つい最近、NHK地上波でガンジー、キング、ベニグノ・アキノ、そしてアウン・サン・スー・チーの非暴力の系譜を『映像の世紀 バタフライ・エフェクト』という番組で観た。
そのなかで、殺されてしまったアキノ氏が、1982年に封切りとなった映画『ガンジー』を3回観た、それによって非暴力の戦いを鼓舞されたのだという事実を知った。
アキノ氏についは、その友人だったという石原慎太郎さんの本で、本気でアキノ氏とゲリラとして戦おうと話しっていたということを読んでいたので、映画の力を改めて知らされる思いだった。石原さんは帰国に反対していたとも書いている。
たった一発の銃弾が人の、国の運命を変えることがある。しかし、フィリピンの民衆はフェルディナンド・マルコス大統領を許さなかった。
時が過ぎ、そのフィリピンの現在の大統領は子息であるボンボン・マルコスである。母親はもちろんイメルダ・マルコスである。毀誉褒貶はあるが、美しい女性として知られている。花の女王と呼ぶことができるだろうか。
「イギリスとインドの関係、さらには広く先進国と後進国の過去と未来」については、『綿の帝国』という800頁を超す分厚い本を読んだ。その次には、これまた分厚い秋田茂氏の『イギリス帝国の盛衰』(幻冬舎新書)を読んだ。
私は、綿の種について初めて知り、綿繰り機の構造を調べ、またなぜランカシャー地方で産業革命が起きたのかも学びなおした。それどころか、産業革命という言い方は、それが革命であったと称する点においてもはや大方の支持を得ていないとも教えられた。
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