1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「平成28年の年賀状」団塊の世代の物語(1)

Japan In-depth / 2024年1月12日 11時18分

僕は、もう自分ひとりで弁護士業務にたずさわることはしないことにしている。事務所の経営のほうに忙しいからね。弁護士として責任のある仕事をするには、誰かが、四六時中依頼された案件のことを考えていなくっちゃいけない。僕一人には物理的に不可能だ。





非上場の少数株についてなら専門家もいる。リーダーの弁護士のもと何人もの弁護士がそうした仕事に打ちこんでいる。非上場の会社の相続問題なら、いま現在この瞬間にも、うちの事務所の弁護士たちが全国で何件もの事件を抱えて裁判に取り組んでいるのさ。それぞれに責任者となる弁護士がいて担当し、没頭しているよ。どれも熱意にあふれた優れた弁護士さんたちだ」





しかし、その自ら扱わないという宣言の前に、私たちはスマホの番号を交換してしまっていた。こんな話になるとは夢にも思わなかったのだ。私は、広島の、62年前の小学校の同窓会に仕事を探しに来たわけではなかったのだ。





私の平穏な日々は破壊されてしまうのではないかという確信に似た不安を抱いて、翌日、機上の人になった。羽田に着くまでにきっとなにかが起こる。私の花の女王は、どんなに昔のこととはいえ、あれは私の人生のなかで一度限りの経験なのだ。





私の側には彼女にこだわらなくてはならない理由などなにもあるはずがなかった。第一、62年の間、会っても話してもいなかったのだ。しかし、と私は自分の心に湧きあがる強迫観念から逃げられなかった。もし彼女にこだわらないとすれば、自分の人生にどんな意味があったということになるのか。私は一時間を少し超える飛行機の中で、そのことばかりを考えていた。もちろん自らを滑稽と笑っていた。そのとおり。だが、74年間生きて来たが、そもそも人生は滑稽なものでしかあり得ないのではないか。





羽田に飛行機が無事着陸したとき、私は我と我が新しい運命に驚嘆していた。何が起きるにしても準備はできている。





そもそも、自分自身の相続がどうなるのかが問題なのだという意識は岩本さんにはない。しかし、保険金の受取自体がどうなるのか。そのときの契約と法律関係を調べてみないとわからない。





やがて彼女から私の主宰する法律事務所に連絡があって、私の生活は嵐に巻き込まれた。





嵐が過ぎ去るまでに、あと何年かかるのか。私と嵐とどちらが寿命が長いだろうか。今のところ解答はない。どちらも継続中だ。





トップ写真:




この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください