平成29年の年賀状
Japan In-depth / 2024年2月16日 21時4分
その会では、三井不動産の岩沙さんにもお会いすることができた。「歴史は個人が創る」という事実を、日本でのリート創設の一大事業を17年の間、脇から目の当たりに拝見し感得させていただいた方だ。2キロの体重の変化に注意深くあることですよ、と健康の秘訣の具体的方法も教えていただいた。81歳になられても、体形も迫力も少しも変わらない。
同じ三井不動産の菰田会長とは、菰田という姓についての話でずいぶんと盛り上がった。和歌山辺りから千葉に流れて来た人々が先祖ではないかという話に落ち着いた。
野村證券の古賀さんと三菱地所の杉山博考さんとには、あるお願いごとを申し上げた。杉山さんとは同年の生まれと知り、東大入試がなかったことなど話が弾んだ。ほかにも声をかけてくださる方、こちらから声をかけさせていただいた方が何人もいらした。こうした集まりはなるほど便利なものだと改めて感じさせられる。
たまたま監事を仰せつかった協会でのお付き合いなのだが、さまざまな方の優れた謦咳に接する素晴らしい人生のチャンスだ。世の中が広く、たくさんの優れた人々が、それぞれの場所で社会を支えているのだと実感しないではおれない。当然ながら、自らの存在の小ささをいつも思い知らされる。
平社員1年生として会社に入り、その後たくさんの仕事をこなし、そして巨大な組織をリードするトップの立場に立つ。立てば、待ってましたとばかりその役割を意欲的にこなし、やがて次代に引き継いでゆく。
コーポレートガバナンスについて考え、書き、喋る機会の多い身だけに、勉強になる、身が引き締まる。
しかし、7年前の「やりたいこと、やるはずのこと」はこうしたことだったのかと自らに小さな声で問ってみると、少し違う気がしないでもない。一面では、現実にそれ以上のことが起きているようにも思われる。それでもそうした気持ちは消えない。ではいったいあの時にはなにがやりたかったのか。考えてみるが、どうにもわからない。一週間という区切りに追われる毎日を過ごしている身には、よくわからないままなのだろう。もっと他のなにか、と独りごちてみて、また鷗外の『妄想』に立ち戻る。
私の小説『あの男の正体』(幻冬舎文庫)で鷗外とシェークスピアに触れている。
主人公の男が恋人の房恵に向かって鷗外の言葉を引用して聞かせる。
「勉強する子供から、勉強する学校生徒、仕事するサラリーマン、そして経営する社長、っていう人生だ。いつも鞭打たれ駆られてばかりいる。
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