3.11の教訓は、能登半島地震に生かされたか
Japan In-depth / 2024年3月12日 21時0分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・能登半島地震で津波から迅速に避難したケース。東日本大震災の教訓が生きた。
・一方、避難所の環境整備など、まだ改善の余地が残った。
・今後の災害に備え、過去の教訓を生かして出来ることから準備することが重要。
今年も3.11がやってきた。13年目になる。10年ひと昔というが、本当にその通りだと思う。
そして元旦、能登半島地震が起きた。東日本大震災の教訓は生きなかったのか・・・そんな思いを抱いた人も多かったろう。
しかし、昨日NHKの番組を見ていたら、石川県珠洲市三崎町寺家下出地区の話をしていた。この地区の住民は約40名、津波の被害想定、最大13.5メートルの地区だ。
「大津波が来ます!今すぐ逃げること!」。
例のNHK絶叫アナのこの避難の呼びかけを聞き、みな高台につながる階段に向かった。(参考:NHK絶叫アナ「命を守る呼びかけ」とは 令和6年能登半島地震)
登った先の高台(海抜約22メートル)には下出集会場がある。階段は約100段。年寄りにはきつかっただろう。しかし、みなためらうことなく登ったという。
実はこの避難用階段、東日本大震災後、住民の要望で市が整備した。津波が来た時に備え、避難訓練を毎年していたという。「なにかあったら集会場へ」を合言葉にしていたことが功を奏した。
▲図 珠洲市津波ハザードマップ (寺家下出地区はマップの上)出典:珠洲市
東日本大震災の時、「津波てんでんこ」という言葉が知られるようになったが、能登半島地震でもこの教訓が生きて、多くの命が助かったことは他の地域でも教訓になる。
気になったのは、珠洲市の例のように、定期的に避難訓練を他の自治体もやっているかどうかだ。もし、津波被害の可能性があるにもかかわらず、定期的に訓練が行われていない自治体に住んでいるのなら、自らハザードマップを確認し、避難指定所までの避難経路を実際に歩いてみることが必要だ。
また、東日本大震災の時、多くの人が迅速に高台に逃げて助かったことから、「釜石の奇跡」などと言われた宮城県釜石市だが、家や施設から動かず、命を落とした人もいた。そうしたことから、「奇跡なんかじゃない」と複雑な気持ちを抱いた住民も多かったと聞く。
「家族を置いて自分だけ逃げられない」と、1人で逃げることを躊躇した人もいたという。極限状況では、苦渋の決断を迫られることもあるだろう。
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