「平成30年の年賀状」団塊の世代の物語(2)
Japan In-depth / 2024年3月13日 23時13分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
【まとめ】
・石原さんが亡くなって2年。誰も、もはや、石原慎太郎について語らなくなってしまった。
・「裕次郎の兄です」と自己紹介する石原さんには、複雑な心境があったのではないか。
・明日は今日よりも良い日になる、を疑ったことはない。だから、『団塊の世代の物語』を書く。
相変わらず1週間単位の生活を送っています。月曜日から4回眠ると金曜日になっていて、土日は走り過ぎます。すると次の月曜日です。月も四季もありません。照明とエアコンのある室内にいるかぎり朝夕すらもありません。
本を読むのが最大の愉しみです。深夜目が覚めては読み、休みには終日寝たり起きたりしながら読み続けます。なんでも読みます。過半を片端から忘れてしまいます。
書いてもいます。12月に『少数株主』という小説を幻冬舎から出していただきました。最初の本から20年で18冊目になります。
弁護士の仕事の緊張が、こうした生活を送る私の心を支えます。
ふと人生は繰り返しに過ぎず、終点はないのだと錯覚することがあります。もう直ぐ思い知らされるのだとわかってはいます。わかってはいても、といったところでしょうか。
未だ、昔を偲ぶ心境に至っていません。夢のなか、若いまま、なのです。
以上
「相変わらず1週間単位の生活を送っている」とある。それは今にいたるまで少しも変わっていない。
「書いてもいる。」そのとおり。これも同じことだ。
『少数株主』を出してからも、4冊も本を出した。
最新は『我が師 石原慎太郎』だ。去年の5月だった。
石原さんが亡くなって2年。人というものは、去るものは日々に疎しなのだという感をつくづくと深くする。あの石原さんにして、死してほんの2年。誰も、もはや、あの石原慎太郎についてほとんどなにも語らなくなってしまった。
私が石原さんに話したとおりだ。
初めてお会いした日のことだった。
「君の事務所、見せてくれよ」と初めて私の事務所にいらしたときのこと、食事をした近くの『シティ・クラブ・オブ・トーキョー』から歩いて数分の間、いっしょに横に並んで歩いていると道行く人々が振り返って見る。ことに横断歩道で立ち止まると信号待ちの人がみな石原さんを見上げていた。
事務所の部屋で、石原さんは、「三島さんは実に頭のいい人だったな」と私に向かってつぶやいた。しみじみとした調子、様子だった。その時、私は、「もう石原さんはどうやっても三島さんにかないませんよね」と言った。余計なことを口にした。
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