「平成30年の年賀状」団塊の世代の物語(2)
Japan In-depth / 2024年3月13日 23時13分
たしかに「もう直ぐ思い知らされる」のだろう。しかし、どんなことになったら「思い知る」のだろうか。不治の病に罹っていると医者に知らされたときだろうか。定期的に人間ドックに入り、必要があれば治療を受けることをなん回か繰りかえしてきた。これからも同じことだろう。それでも、来るべきものは必ず訪れるに違いない。
石原さんは、完治したと信じ切っていたすい臓がんだったはずが「あと3か月」と宣告を受けたと書いている。(『絶筆』所収、『死への道程』文藝春秋、2022 128頁)
医師に示された、「画面一面満天の星のように光り輝く映像をながめながら、
『これで先生この後どれほどの命ですかね』
質したら、
即座に、あっさりと、
『まあ後三カ月くらいでしょうかね』
宣告してくれたものだった。」
「満天の星のように光り輝く映像」という表現を自らの肉体のうちにあるものに与えたのが、いかにも石原さんの感性を示していてあまりある。そういえば、私にしきりに中河与一の『天の夕顔』を読め、と勧めてくれたものだった。
今回『死への道程』読み直してみて、「NTT病院に出向いて検査を受けた」とあるのに気づいた。
その病院には、つい先日私も行ってきたばかりである。
といっても、検査でもなければ手術というほどのことでもない。定期健診で見つかった大腸のポリープを取り去ってもらうべく、紹介を受けて大研医師に必要な作業をお願いしたのだ。私はふだん抗凝固剤を飲んでいるから、大腸の定期健診の際についでにポリープを取ってもらうというわけにいかないかったからの二度手間だった。
大圃医師については面白いやりとりを二人の方とした。
私が大腸のポリープを取りにNTT東日本病院に行ったと、元NTT社長である三浦さんに話していたら、隣に座っていたJR東日本の冨田さんが、「ああ、うちにいらした素晴らしい先生なんだけどNTTに行っちゃって、とても残念だった先生だよ」と言われた。
すぐあとに大圃先生にその経緯をお話ししたら、そうでしたねと覚えていらした。
医師の世界には医師の世界の、ビジネスとは異質の大きな世界があるのだと感じらせられた瞬間だった。当たり前といえば当たり前のことなのだが、私には清新な経験だった。
私は、『団塊の世代の物語』をレトロスペクチイフの小説にするつもりは毛頭ない。
私は常に前方を、すこし上向きに見つめ、着実に歩をすすめていく生活を送ってきた。明日は今日よりも良い日になることを疑ったことなど一度もない。
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