団塊の世代の物語(9)
Japan In-depth / 2024年10月15日 23時0分
そうやって55年間を生きてきて未だ生きている。生きている自分が自分が英子とこうなっている、と思い直すと、我ながらとてもおかしな気がした。所詮、人生は滑稽なものでしかないという自分の割り切りとピッタリなようだなという気がして、大きな息をついた。
「二人がかりで日本の再建をするのよ。」
英子が言った。
「えっ?再建?」
「そう。それが私とあなたの使命。団塊の世代の後世への責任。
忙しく勉強して、モリモリ働いて、いまや引退して優雅な余生を送ろうとしている世代。
でも、それではいけないの。」
「ふーん、そうか、あなたはそんなことを考えているのか。」
三津野は思い切って口にした。
「で、それは峰夫氏への思いからなの?」
「違う!峰夫はなんの関係もない。峰夫は私があなたに近づくための人、踏み石」
「おやおや、恐ろしいね。踏み石、ステッピングストーンか。
僕もそうなるのかな」
「あなたは違う。あなたは私と一体になるの。」
「踏みつ踏まれつ、かい?」
「違う、違う。くっついているだけ。いずれ一つの石になる。砂が巌になって苔むすまで、っていう国歌を持った国の人間だもの。
そして、二人で一大事業に挑むのよ。」
三津野は目のまえの英子から30センチほど間をおいてから、改めて眺め直した。
<ここへ来るための77年間だったのか>
しみじみとした感慨があった。
トップ写真:イメージ 出典:Jcomp/GettyImages
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