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団塊の世代の物語(9)

Japan In-depth / 2024年10月15日 23時0分

あなたと話してて、そんなことまで思い出しちゃった。





僕は5歳くらいかな。目のまえの腰の曲がったおばあちゃんになっている祖母に18の時があったんだって、なんだか不思議なような、夢のような気がしたな。亡くなってからずーっと後になってから、色白で大きな胸をした女性だったんだから、たぶん、とっても魅力的な、すてきな女性だったんだろうなと思ったりしたね。





90歳で亡くなったけど、遺体になったら腰がまっすぐになっていて、ああ本来はこうだったのかって少し驚いた。陰毛もすべて抜け落ちていて、膣口だけがぽーんとはっきり見えた。祖母は腰巻を身に着けていたけれど、そんなところを見るのは初めてのことだった。僕は高校生だったかな。





後になってから、クールベの『世界の起源』という絵を観たとき、ああ、ほんとうだ、確かに祖母は僕らの起源だよとおもったりした。」





「いいお話ね。





あなたのおばあちゃんの膣に執着した男性がなん人もいたのかしらね。」





「そうか、さすがにそれは知らないな。でも、とっても性的魅力に富んだ女性だったろうなとは、今でも、自分が77歳になっていても、思う。





あの戦争が終わったときにちょうど70歳。





今のあなたと変わらない年齢だ。そうか、そうだったんだ。性的に惹きつけるものがあるところは、あなたはきっと祖母と同じなんだろうな。」





「お会いしてみたかった。」





「亡くなったのは90だったから、あなたが祖母に会う可能性は現実にあったんだよ!」





「そうね。でも、今、あなたに褒められるのなら、なんでも嬉しい。」





「乳首を吸っていい?」





「そんなこと、目の前の相手に聞かないものでしょ。それとも、いつもそうやって余計なことしゃべってきたの?」





「そうだね。そういえばいつもそうだった。相手の承認をとってからやってたな。」





「へえ、無粋ね。いま風なのかもしれないけど。」





「今じゃないよ、何十年も前のことさ。」





三津野は英子の乳首に軽く唇をあてると、





「そうか、戦争が終わったとき祖母は70歳か。





その戦争の話から、落語の続きをやろう。いい?」





「はい」





英子は毛布を戻しもしないで裸の胸をさらしたままで返事をした。





「70で敗戦を迎えた祖母は、日清戦争を知っている。娘のころ川に裸で飛び込んで遊んだのはそのころのことになる。





次の日露戦争の時には30で子どもがいた。その子を二人とも火事で亡くしてしまって浄土真宗の信者になったんだ。





第一次大戦のときには40。もう僕の父もその姉も生まれていた。





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